新聞とネット、それぞれの強みは何か。日本新聞協会広告委員会が24年3月22日に公表した「多メディア時代における新聞の役割とメディア接触者の動向調査」では、新聞とネットの補完関係が読み取れる。例えば「日常生活に役立つ」「親しみやすい」「自分の視野を広げてくれる」という項目では、ネットに軍配が上がる。

 一方、新聞の強みも健在だ。例えば「安心できる」という項目では、新聞が47.1%であるのに対しネットは16.2%、「情報が正確で信頼性が高い」では新聞が46.0%に対してネットが17.7%と、新聞が圧倒的に強い。つまり、信頼できるメディアとして新聞の地位は揺らいでいない。

 近年は生成AIの影響も見逃せない。生成AIは記事を大量に生成して瞬時に発信できるため、虚偽や悪意のある記事の大量生成が懸念されるからだ。

 また、年初には米バイデン大統領の偽音声が有権者に送られる事件が発生するなど、AIによるフェイク情報の拡散が与える負の影響は計り知れない。つまり、正確で信頼性が高い情報のニーズはむしろ増しているのだ。生成AIの負の側面を新聞社がカバーできるかどうかが、減少を続ける発行部数の行方をも左右するだろう。

(行政システム顧問 蓼科情報主任研究員 榎並利博)