公正取引委員会が、ヤフーなどのニュースプラットフォーム事業者と新聞社などのメディア各社の取引実態を調査した報告書を公表した。新聞各紙はその内容の一部を取り上げて、こぞって「ヤフーは優越的地位の可能性」と報じている。しかし、その報告書の別の部分には、新聞が「報じない自由」を炸裂させた、「新聞はオワコン」宣告ともいえる内容が盛り込まれていた。(イトモス研究所所長 小倉健一)
ヤフーが「優越的地位にある可能性」を
新聞社はこぞって報じるが…
公正取引委員会が、9月21日に、ヤフーなどのニュースプラットフォーム(PF)事業者と、記事を提供する新聞などメディア各社の取引実態の調査報告書を公表した。それを受けて、新聞各紙は報告書の中身について報じている。
特に各紙が共通して報じたのが、ヤフーが「優越的地位にある可能性」が指摘されたことやメディア各社に支払う記事使用料が低いこと、ニュースアプリ・サイト上のレイアウト変更や契約変更、説明不足などによってメディア側が不利になるのなら問題だ、といった記述だった。
新聞は今でも、通称「日刊新聞法」によって他社による買収から守られていたり、「著作物再販制度」によって新聞社が小売店に対して販売価格を拘束することを例外的に認められていたりする(独占禁止法の適用除外)。また、軽減税率も適用されているなど、さまざまな規制によって守られてきている。
これを「優越的地位」と呼ばずして、どう呼べばいいのか不明だが、自分たちの優越的地位については横に置き、まずは自分たちより強くなってしまったヤフーへの不満について、報告書を報道する形で表明しているように見える。
同じマスメディアでもテレビは、総務省から電波を借りて放送するために特権的な地位にあり、高い公平性を期すために放送倫理・番組向上機構(BPO)などの縛りを受ける。ただ、新聞はそもそも勝手に発行し、自由な意見を表明するものであったはずだ。しかし、新聞社は自分たちを「社会の公器」であると考えて、国による手厚い保護を受けてきた。それでも経営不振に陥るという有様だ。
あらかじめ表明しておくが、インターネットメディアの成長により、テレビや新聞が情報を独占できなくなって、本当に良かったと思う。ジャニーズ問題に限ったことではないが、テレビや新聞は情報独占をいいことに「報道しない自由」を連打してきたのだ。
バカバカしい横並び報道やバラエティーの過度な自主規制を見るにつけ、国の保護を受けるとここまでコンテンツはつまらなくなり、そして、人間のクリエイティブな部分の可能性を摘んでしまうのかと残念に思ってきた。
公取委の報告書には、テレビや新聞が「報じない自由」を行使して触れなかった部分があるので、今回は、そのことを中心に明らかにしていきたい。