金利が上がる新時代に対応した住宅ローン本『金利が上がっても、住宅ローンは「変動」で借りなさい』が、発売してすぐに重版になるなど話題を呼んでいます。同書の著者であり、日本最大級の住宅ローン比較診断サービス「モゲチェック」(株式会社MFS)を運営する塩澤崇氏に、「金利」の陰にかくれがちな「団信」について解説してもらいました。

住宅ローンがお得な理由の1つは、一般の保険よりも遥かに有利な「団信」にありPhoto: Adobe Stock

住宅ローンと団信はセットがお得

 住宅ローンを契約するとき、必ずセットで検討すべきなのが「団体信用生命保険(団信)」です。住宅ローンはどうしても金利にフォーカスが当たってしまい、団信は脇役のように考えられてしまうことが多いのですが、実は住宅ローンの経済的メリットを語るうえでは絶対に欠かせません。「金利と団信はセット」と覚えておきましょう。

 そこでまずは、団信が住宅ローンにおいてどのような役割を果たしているかを理解しておきましょう。

 団信は、債務者(住宅ローンの契約者)が死亡または高度障害状態になったときに備える生命保険です。具体的には、図のように、債務者が死亡または高度障害に陥ったときに、残っている住宅ローンの元本を生命保険会社が銀行に一括返済する仕組みで、団信の保険料は銀行に支払う住宅ローン金利に含まれています。

住宅ローンがお得な理由の1つは、一般の保険よりも遥かに有利な「団信」にあり団体信用生命保険(団信)の仕組み

 簡単にまとめると、「ローンを組んだ人に死亡や高度障害などが起きたときに、ローン残高をすべて肩代わりしてくれる」という非常に心強いものなのです。

 このように死亡や高度障害状態に備えるのが団信の基本的な形なのですが、現在はがん保険が付帯した「がん団信」など、特定の疾病になったときにも保障してくれる団信を選べる銀行が増えています。とはいえ、「もともと生命保険やがん保険に入っているから、団信は余計だな」と考える人もいるでしょう。

 でもこの団信、実は「めちゃくちゃお得」なのです。なんと、団信は一般的な保険商品と同程度の保障内容を、半分以下の保険料で得られる可能性があるのです。

 というわけで、団信の保険料(保障をキープするためのコスト)と保険金額(保障内容)の関係を具体的に見てみましょう。借入金額3500万円、返済期間35年間の住宅ローンでは、一般団信の保険料は金利0.2%分に相当します(2023年モゲチェック分析)。そのため、35年間に支払う0.2%分の金利コストを保険料と考えると、月々の保険料は平均3000円程度です。

 次に、この団信による保険金額を計算してみましょう。団信で保障されるのは住宅ローンの残債(残っている元本)と同じですから、当初の借入額が3500万円で完済時にはゼロになることを踏まえると、平均的には1750万円分の価値があるといえます。まとめると、この団信は「月々の保険料3000円で1750万円を保障する死亡保険」と同程度の商品といえます。

 では、一般的な死亡保険で1750万円の保険金を得るためにはいくら保険料が掛かるのでしょうか?

 答えは、毎月約7400円です。保険料は保険会社や保険商品によって違いがありますが、ここではライフネット生命の保険料シミュレーションを使って、40歳で30年間の定期死亡保険の保険料を計算しています。

 この時点で、団信を使うことで月7400円の死亡保険とほぼ同等の保障が半額以下で手に入ることがわかりますが、がん団信も考慮するとさらに団信のメリットが大きくなります。一般団信にがん団信を付加した場合、金利が0.1%程度上乗せされることが多いです。この0.1%を毎月返済額に換算すると約1500円です。

 次に、1500円と同水準の保険料を支払うがん保険では、どの程度の保険金を得られるかを調べてみました。すると、月額保険料1500円で保険金はたったの100万円しかありませんでした。つまり、がん団信が平均1750万円の保障であるのと比べると、同程度の保険料を取るがん保険の保障は10分の1にも満たず、これではまったく勝負になりません。

(※この記事は、『金利が上がっても、住宅ローンは「変動」で借りなさい』の一部を改変し公開しています。)