伝説のバラエティ番組や人気ドラマにて、多くのタレントや女優のスタイリングを手掛けてきた70代現役スタイリスト・西ゆり子。彼女が60代で経験したさまざまな困難、そして現在の「生活」や「服」のあれこれを綴る。本稿は、西ゆり子『Life Closet』(扶桑社)の一部を抜粋・編集したものです。
今日着る服は
今日選ぼう
「今日は、なにを着ようかしら?」
毎朝、クローゼットの中に並んだ服を眺めながら、ゆっくり朝ご飯を食べるのが私の習慣です。だから、クローゼットの扉はいつも開けっ放し。中の空気が淀まぬように、並んでいる服がよく見えるようにしています。
今日着る服は、今日選ぶ。それが私のやり方です。なぜならば、今日着る服は、その日の天気や気分に合わせて選びたいと思っているからです。朝起きて、雨がしとしと降っていたら、水たまりなど気にせずに雨を楽しめる装いで出かけたい。レインシューズを履いてレインコートを羽織り、お気に入りの傘をさして元気に歩けば、子どもの頃に戻ったような楽しい気分になれるでしょう。
また、真っ青に晴れ渡った空に爽やかな風が吹いている日は、自然と新しい服を着たくなります。どこかに飛んでいきたいと感じるような風になびくデザインで、日の光に映える色の服を着て出かければ、一日中、ワクワクして過ごすことができると思うから。
そんな思いを巡らせながら、開けっ放しのクローゼットに目をやると、「あのブルーのブラウスにしよう」という“今日の一着”が、ふっと目に入る。そこから少し落ち着いて、「今日会う人」と「今日やること」を思い浮かべます。そうそう、今日は仕事先の方と大事な打ち合わせが入っているんだっけ。だったら、ブルーのブラウスの上にジャケットを羽織ってきちんとしていこう。そんなふうにして、その日のコーディネートが決まるのです。
自分の機嫌を
とれるのは自分だけ
60代からの人生を楽しむために、「自分の機嫌は自分でとる」ことを意識するようになりました。正直な話、もともとの私はそれほどポジティブな性格ではありません。些細なことを気にしてくよくよ悩んだり、落ち込むときはどん底まで落ち込みます。そんなアップダウンの激しい自分の機嫌をとってあげられるのは自分だけ。自分自身に、常にそう言い聞かせるようにしています。
たとえば、仕事に出かけようと思った矢先に電話がかかってきて家を出るのが遅れ、ただでさえ焦っている上に、車を走らせれば信号はすべて赤。そんなとき、怒ってイライラしていると、たちまち心がネガティブなモードになってしまいます。