「今朝、掃除をしないで、家を出たせい?」
「夕べ、息子と口ゲンカをしたから、こんな目にあうの?」

 悪いほう、悪いほうへと考えて、どんどん落ち込んでしまうのが私の悪いクセ。そんなときは、「ええ、ままよ」と開き直って、発想を180度変えるようにしています。

「多少、家が汚くても死ぬわけじゃない」
「赤信号は、焦って危険な運転をしないように、私にブレーキをかけてくれたんだ」

 というように。そうすると、心がふっと軽くなり、自然と笑顔になれるのです。

 雨が降って憂鬱な日でも、

「よかった。公園の木や花が喜んでいる」

 と考えれば、穏やかな心で一日が過ごせます。

「今日はなんの予定も入っていない」

 とヤル気が出ない日は、

「やった! 新しくできたパン屋さんに行けるいいチャンス!」

 とポジティブに。そんなふうに考えられるようになったのも「年の功」かもしれません。

年齢を重ねることは
「老化」ではなく「成長」

「西さんは、いつも元気で前向きですね」

 ありがたいことに、近頃は、よくそんなふうに言われます。でも、今だからこそ正直にお話しできますが、60代の10年間はずっと“迷いのトンネル”の中をさまよっているような日々でした。

 60歳になったとき、還暦とは人生が一周し、ゼロに戻ることだと聞きました。「なんて素敵なことかしら」。

 ゼロから始めようと意気揚々、歩きだしたのはいいけれど、肉体の老化は容赦なく訪れて、去年似合っていた服が似合わなくなって憂鬱な気分に。体力や気力もガクンと衰えて、お産のとき以外は病院と無縁だった私も次々と病気やケガに見舞われました。

 息子たちを出産して以来、できるだけ自然な生活を心がけ、ケミカルな薬は飲まず、ジャンクフードも口にせず、自分なりに正しいと思われる方法で、人一倍、健康には気を遣ってきたつもりです。にもかかわらず、甲状腺の病気になってしまって…。60代半ばで自分の会社の立て直しに奔走し、その無理がたたったのか、病気が悪化して脚のむくみがひどくなり、病院を訪ねたところ即入院となりました。