それに気付いたことで、会社での働き方も見え、転職ではなく復職に至ります。ヒロさんは、復職した後も香りの活動は続けています。個人事業の位置付けで「言葉」と「香り」を組み合わせた「文筆調香」という価値提供をし、クライアントそれぞれのニーズに合わせたコンセプトと香り作りを行っています。

 ヒロさんはこのように振り返ります。

「こんな働き方になったきっかけが休職というある種の強制終了だった訳ですが、誤解を恐れず言うとあのとき休めてよかったと思っています。キャリアに傷がつくとか、周りの目を気にするとかが最初によぎった感情ではあります。ただ、その感情を横に置き、これまでできなかったことや考えられなかったことに向き合う。その先には、ありのままの自分を受け入れ、自分で自分の人生の手綱を握り直すきっかけが得られ、人生の大きな転機となりました」

「そう言えば好きだった」ことで
ありのままの自分を受け入れる

 もがきながら、好きだったことに巡り合えたユカさんも、最初は会社に在職しながらの転職活動を続けていました。「動いて悩んでもがいて、また動いてそれでもうまくいかなくて立ち止まって、それでもまた動いて。本当にこの先事態は好転するのか、ずっとこのままどうしたらいいか分からないままなんじゃないか、とにかく終わりのない薄暗いトンネルの中にいる気持ちになったりもした」と、苦しい時期を過ごしたことを振り返ります。

 それほどユカさんにはこの転機でゆずれないものがありました。

 営業職だった当時、自分の人生で何が欲しいのか、何を成し遂げたいのか考えたとき「時間を忘れるほど夢中になれること」「自分を表現できる何か」「それを通じて誰かのためになる事業をする」を軸に据えたユカさんは、うまくいかない転職活動の中であっても「つくる仕事」がしたいという思いを強く持ちながら、活動を続けていました。しかしそれもうまくいかず、次の就職先を決めずに退職するに至ります。