社会に出てからがむしゃらに働き続け、いつの間にか自分を見失っていた――。そんな経験がある人には、一度働くことから離れて休憩をする“キャリアブレイク”が必要なのかもしれない。心身の不調で休職を余儀なくされたり、転職活動がうまくいかなかったりと、休憩のはじまりは突然だったとしても、その期間に自分の好きだったことを思い出し、新たな人生をスタートするケースもあるという。キャリアブレイク経験者の“その後”に迫る。※本稿は、北野貴大『仕事のモヤモヤに効くキャリアブレイクという選択肢 次決めずに辞めてもうまくいく人生戦略』(KADOKAWA)の一部を抜粋・編集したものです。
適応障害で休職している間に
自分の強みを見つめ直した
社会から離れてみて本当に自分がやりたいことを見つけ、起業する人もいますし、小さく試してみたことが花開きフリーランスの道に進む人もいます。また、ライフスタイルを模索した結果、会社で働く、ではなく、自立するしかない、と発起して独立に挑む人もいます。
IT系の会社に勤めるヒロさんも、新しい選択肢に気付いた一人です。小さい会社だったこともあり、営業・事業コンサルタント・コピーライターなどの領域も並行して担っていました。常に成果を上げるための不安と物理的な業務量に追われ、寝ている時間も含めて24時間仕事をしているような状況で、次第に身体の不調を感じ始め、それに伴って心も不安定に。
結果、勤続4年になるタイミングで適応障害と診断され、6カ月間の休職をすることとなりました。
休職期間中の前半2カ月は単純に体調が悪くて何もできない日々を送っていましたが、次第に体調が良くなってきたタイミングで「自分」と「キャリア」を見つめ直すようになっていきます。今まで「やりたい」と思ってやってきた仕事は本当に心からやりたいことだったのか。こういう状態になったのは誰かのせいではなく自分の認知や性格が招いたものだったのではないか。
ひいては今後はどういう環境を自ら作り出せば、これまでの知見を活かせて独自のポジションを作っていけるのか。自分自身のやりたいことや性格の見直しから、スキルやキャリアの棚卸しをする時間に充てていったのです。結果、自分の強みを生かして自分を愛せる働き方の1つとして「文筆」と「香り」というキーワードを導き出しました。
「文筆」は学生時代から小さな成功体験がありました。そこに仕事で培ってきたコピーライターの力が加わり、その要素に何かを掛け合わせて独自の表現と働き方を実現しようと考えました。そこで、学生時代にずっと関心のあった「香り」をこの機会に学び直すこととしたのです。
休職期間をポジティブに過ごし
復職して新しい働き方を見つけた
ヒロさんは、大学時代に心理学部で植物由来の精油が人間にどのような心理的影響を及ぼすかを研究していましたが、就活では縁がなく、香りの世界には行かなかったため、忘れ去っていた関心事でした。それをこのタイミングで「自分は何が好きか?」という問いの中から思い出していき、休職中にスクールに通うことで香りのブレンド方法を習得していったのです。
休職中の自主的な活動を通して気付いたのは、自分を押し殺していたことが原因で身体を壊したのではないか、ということ。