退職を決めたら今すぐ「半年分の残業記録」を調べて!絶対ソンしない退職の極意【産業医が教える】画像はイメージです Photo: PIXTA

なかなか会社を辞められないことで、大きな心の傷を負ってしまう人はたくさんいる。退職する際にしつこく引き止めてくる上司への対応法やなるべく経済的に損をしない手段など、精神科医で産業医の著者が実践的な方法を伝授する。本稿は、井上智介『この会社ムリと思いながら辞められないあなたへ』(WAVE出版)の一部を抜粋・編集したものです。

表面的な円満退職を
目指すことが大事

 退職の準備をするときに真っ先にすることは「退職届」を書くことでも、上司にアポイントを取ることでもありません。「何があっても表面的な円満退職を目指す」と心得ることです。上司や同僚から責められるような「感じの悪さをみせない」ことと、もし責められるようなことがあっても「受け流せるしくみ」をつくることが大切です。

 従業員数が10人以上の会社には必ず就業規則があります。そこには残業規定や就業時間規定、有給休暇、特別休暇、退職時のルールなどが細かく指示されているので、退職時には確認をしましょう。

 配布をされていない場合でも、社内の見やすい場所に掲示・保管されている、パソコンの共有フォルダに入っているなど、社員がいつでも見られるようにすることは、法律で義務付けられています。上司や担当者に「就業規則を確認させてください」と伝えることは悪いことではありません。

 覚えておいてほしいのが、就業規則はあくまでも会社のルールであり、事業主からの「お願い」に留まるということです。 守れなかったら法律違反になるわけではなく、あくまでも法律が優先されます。

 例えば、「退職時期に関しては、退職届が受理されてから3ヵ月後とする」と就業規則に書いてあった場合、1ヵ月後では退職できないのかというと、そうではありません。

 法律上は2週間前に退職届を出せば辞めることができるのです。

 私は表面的な円満退職を目指していただきたいので、なるべく就業規則の定める通りに退職届を準備したほうがいいと思います。しかし、心身の不調によって、どうしても業務を続けることができないのであれば、あなたの体を最優先にするのは当然です。

会社と揉めずに退職するために
重要なのは「退職理由」

 退職理由をつくるポイントとしては、「この理由なら会社としてはどうすることもできない」と思わせられるかどうかです。

 すでに休職中ならば「休む期間も長くなってきて、このままじゃ回復も見込めないので退職します」と正直に言ってもいいでしょう。しかし、今まで問題なく働いてきた(少なくとも会社はそう思っている)人が突然「労働条件が悪いので辞めます」「あの人のパワハラにはもう耐えられません」など、正直に言ったら、関係が悪くなることは避けられません。

 どうしても「会社が悪い」と糾弾したい場合は、辞めることを決心するより前に、部署異動などの交渉の際に伝えましょう。 もう改善の見込みのない会社には、黙って「表面的な円満退職」を目指したほうが、余計な労力をかけずに済みます。