そんな状況から、イラストレーターとして独立して3年経ったユカさんは、「立ち止まったからこそ自分と向き合えて、知らない間に自分で設けていた固定観念を外せたり、新しい道や可能性に目を向けられた」とキャリアブレイクを振り返ります。

「そういえば好きだったこと」とは、思い出してしまえば、簡単なことかもしれませんが、そんな簡単なことさえも忘れてしまうほど、忙しい日々を送っている人はたくさんいるのではないでしょうか。

離職期間も無職期間も含めて
人間のキャリアは積み重なっていく

 一般的に、離職期間や無職期間はブランクと言われ、無価値で何もしていなかった期間とされてしまうこともあります。

 ただ、実際は、ここまで紹介してきた方たちのように、この期間が大きな意味を持つことがあるのです。時には、働いていた期間よりも、人生にとって大きな影響を与える期間となっている人もいます。「ブランク」ではなく、「キャリア」なのです。会社に所属している期間だけが、キャリアなのではありません。会社に所属している期間だけ、成長している訳ではありません。

 キャリアとは直訳すると「経歴」です。キャリアの語源は、ラテン語の車を曳くことでできた車道という意味の言葉です。この言葉どおり、みなさんが人生を歩いてきたその道こそがキャリアなのです。いつからか、キャリアのことを「職歴だけ」と誤認する機会が増えたように感じます。このキャリアブレイクの期間が、キャリアとなって積み重なった結果、次のキャリアが生まれているのです。

 傍から見れば計画性がなく危なっかしいキャリアで、たまたま良い仕事に就けたから、そんな悠長なこと言えるんだ、と思う人もいるかもしれません。ただ一方で、新卒で入社して、そのまま定年を迎えるといったような前提が崩れた今、新卒入社からスキルを活かして転職してキャリアアップしていくような分かりやすくきれいな転職街道だけがもてはやされている気がします。ストレートな道だけでなく、十人十色でいろんな回り道や曲がった道を紆余曲折した結果、納得感のあるキャリアにたどり着いた人たちもいます。そんな人たちは、今のキャリアが正しかったかどうかは分からない、ただ、納得している、と教えてくれます。