筆者が大学院時代に所属していた研究室では、児童や生徒に研究者が直接勉強のやり方を教える「学習法講座」を開催していました。そのため筆者もこれまでにいろんな学校に行って勉強のやり方を教えてきました。そのなかで「問題が解けるようになるには」という講座がありました。この講座はまさにこの教訓帰納を教えるものでした。

 しかし、生徒は、やり方を紹介するだけではなかなか教訓帰納を使いこなすことができるようにはなりません。そのため、講座の中では必ず、「教訓帰納の大切さを実感してもらう活動」をし、その後に「色々な具体例を見せる」「使う練習をする」といったことを行うようにしました。

 教訓帰納の大切さを実感してもらう活動としては、先ほど紹介した要塞問題や放射線問題に取り組んでもらいました。まず要塞問題を考えてもらい、答え合わせをして、その時に「小さな力に分けて、集めるとよい」という「考え方のポイント」を押さえさせてから、放射線問題を考えてもらいました。ポイントを押さえておくことで、問題が似た構造であるものだと、考えやすくなることを経験してもらったわけです。

 このようにして「考え方のコツ」を押さえておくと問題に取り組みやすくなることを全員で確認して、普段勉強をする時も、コツやポイントを押さえておくことが大切であると伝えます。

「色々な具体例を見せる」「使う練習をする」にあたる活動としては、実際の数学の問題での誤答例を配って、どんな間違え方をしているかを考えてもらいました。そして、こういった時にはどんなポイントを書き込んでおくとよいのか、グループで考えてもらいました。

 このように、教訓帰納という勉強方法を身につけるには、その方法を知るだけでなく、色々な具体例を見ながら教訓の引き出し方を学んでいくことが大切です。