「似たような問題」を
どう認識すればよいのか

「ポイントを押さえておけば、似たような問題が解きやすくなる」なんて、すごく当たり前で、簡単なように思うかもしれません。しかし、別の実験では、要塞問題とその解決方法を読むだけの条件では、放射線問題の正答率が低くなっていました。要塞問題やその答えに触れているにも関わらず、似た形式の放射線問題が解けなかったということは、私たちは、ちゃんと意識してポイントをつかむようにしないと、うまく類推を使って考えることができないのだということを意味しています。

「解いた問題から他の問題にも使えそうなポイントを引き出しておくこと」を、教育心理学では、「教訓帰納」と呼んでいます。とりわけ数学や理科の問題が解けなかった時に、単に答えを写したり、解き方を丸暗記するのではなく、自分が解いた問題を振り返って、「どういうタイプの問題か」「この手の問題を解くにはどう考えるとよいのか」を押さえる教訓帰納を使っていきましょう。

 ここまで、解いた問題から他の問題にも使えそうなポイント、つまり教訓を引き出しておくことが大切だと説明しました。この教訓には少なくとも2種類あります。

 1つ目は問題に関する教訓です。「この手の問題を解くにはどう考えたらよいのか」という教訓は、一つ一つの問題に即した教訓です。たとえば、「こういう問題は補助線を引いて合同な三角形を作ると解ける」といったことを押さえておくのは、その問題に関連する教訓であると言えます。

 2つ目は「自分の弱点」であったり、「勉強方法」に関する教訓です。たとえば、「自分にはこの知識が足りなかったから解けなかったんだな」とか「もっとこういうことを大事にしながら勉強しておいた方がいいな」といったことを教訓として引き出すことができます。こうした教訓は、自分の勉強を改善していく上でとても大切であると言えます。

教訓帰納を使うために
知らなければならないこと

 教育心理学では、学び方を身につけていくには、(1)やり方を教わる、(2)やり方を真似する、(3)1人でやってみる、(4)いろんな場面で使いこなす、という4つの段階があることが知られています。これらは、教訓帰納を身につける際にもあてはまります。