類推(アナロジー)を
働かせるにはどうすればいい?

 この2つの問題は似たような構造になっていることに気づきましたか?それぞれ単独で聞かれた時にはなかなか解決方法は思いつかなかったかもしれません。彼らの実験では、要塞問題を含めいろいろな問題を解いてもらっていますが、「要塞問題とその解決方法を自分の言葉でまとめておく」条件と、「要塞問題とは違うタイプの問題を自分の言葉でまとめておく」条件に分け、その後に放射線問題を解いてもらって、その結果を比較しました。このような比較をすることで、放射線問題の解きやすさが変わるかを調べたのです。

 この2つの条件間で放射線問題の正答率を比べたところ、要塞問題の解決方法を自分の言葉でまとめた条件では多くの人が放射線問題に正解できました。それに対して、全く違うタイプの問題を自分の言葉でまとめた条件では正答率が低く、条件の間に大きな差が見られていました。

 心理学では、過去の事例を新しい事例に当てはめながら考えることを「類推(アナロジー)」と呼びます。この実験結果は、問題の特徴を自分の言葉でまとめておくことで、類推がしやすくなり、似た問題が出題されたとき、解きやすくなることを示していると言えます。

 この実験結果の中に、私たちが復習の方法を考える時の大きなヒントがあります。そう、以前に似た問題を解いた経験をもとに類推を使うことで、新たな問題が解きやすくなるのです。

 そうした類推を働きやすくするためには、どういうタイプの問題で、どのように考えると解けるのか、などの問題の特徴を自分の言葉でまとめておく必要があります。これが「考え方のコツ」や「解く時のポイント」をつかむということになります。

 しかも、似たような形式を持つ複数の問題に触れた方が、コツをまとめておく効果が出やすいことも報告されています。つまり、いくつか問題を解いた上で、「この手の問題にはこういう考え方が有効だ」といったことを押さえておくと、類推がさらに使いやすくなるのです。