孫正義氏と弘兼憲史氏Photo:JIJI(孫正義氏)/Photo by Motoyuki Ishibashi(弘兼憲史氏)

想像を絶するスピードとスケールで10兆円企業をつくりあげた経営者から学ぶべきことは多い。孫正義ソフトバンクグループ代表の評伝『志高く 孫正義正伝 決定版』(実業之日本社文庫)の著者井上篤夫氏が孫氏を深く知る人物と対談し、ビジネスパーソンに学びをお届けする連載「ビジネス教養としての孫正義」の第15回。対談相手は、ビジネス漫画の金字塔「島耕作」シリーズ作者の弘兼憲史氏。何のために働くか。偉大な経営者の答えは見事に一致しました。(取材・構成/ライター 田之上 信)

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AIに負けない「人類の代表」を育てる

井上 孫さんはビジネスをまだガンガンやっていますが、一方で、社会、人々を幸せにと、いつも言っています。

弘兼 ビル・ゲイツなんかもそうですよね。

井上 そうですね。そういう社会貢献の考えを持った経営者は魅力的というか。それは経営者のみならず、ビジネスパーソンも、単に働くのではなく、もちろん仕事は一生懸命やらなきゃいけないんだけども、それだけではなく、何か人に役立つという。ややもすると会社員は目の前の仕事だけをやっていればいいやとなりがちです。

弘兼 働かされてる感がすごくありますよね。誰かの役に立つということが、やっぱり働くことの意味でもありますので、僕みたいな仕事でも、誰か1人でも10人でもいいので自分の作品を読んで感動してくれればそれでもう十分です。そのために書いてるようなものです。

井上 孫さんは、孫正義育英財団(代表理事は孫正義)というのをつくって活動しています。「高い志」と「異能」を持った若者に自らの才能を開花できる環境を提供し、人類の未来に貢献することを目的にしていて、最年少は8歳から異才たちを集めて人材支援している。世界的ないろんな賞を取っている若者がいっぱいます。副代表理事は山中伸弥先生で、僕も評議員の一人になっています。

弘兼 それはいつごろから活動されてるんですか。

井上 2016年設立ですから、今年で8年目です。

弘兼 ということはもう世に出ている人もいるわけですね。

井上 ものすごく活躍しています。数学の天才もたくさんいます。もしかするとそういう中から孫さんみたいな人が出るかもしれません。要するにそのくらいのスケールで人材育成に取り組んでいるんです。

弘兼 なるほど、実務に優れた人ではなく、決断する人を育てている。

井上 そうです。だから孫さんは、「君たちは人類代表だ」と言っています。人工知能(AI)に負けるなと。君達は人類代表としてきちっと仕事ができるか、何かできるか、そういうことを考えなさいと。