「圧倒的に面白い」「共感と刺激の連続」「仕組み化がすごい」と話題の『スタートアップ芸人 ── お笑い芸人からニートになった僕が「仲間力」で年商146億円の会社をつくった話』の著者・森武司氏は、2005年の創業以来、18年連続増収増益を達成し、年商146億円となった。ここまで会社を成長させてきた秘密は何か? 本書からより深い学びを得ようと、インタビュー企画を実施。今回インタビューするのは、FIDIAの執行役員CHRO(最高人事責任者)であり、グループ会社の人材事業「Evand」で代表を務めている石田優太郎氏。「人の辞めない人材会社をつくりたい」という想いを胸に、Evandの年商を65億円まで成長させたキーマンである。そんな石田氏に、人材業界で最も優秀な人が転職を1日で決意した理由を聞いてみた。
1日にして転職を決意した理由
――石田さんの現在の役割を教えてください。
石田優太郎(以下、石田):FIDIAのグループ会社である人材事業「Evand(エヴァンド)」の代表をしています。
また、グループ全体の人事まわりを管轄しており、11事業すべての採用を担当。FIDIAでの役職はCHRO(最高人事責任者)となります。
Evandは、Suprieve株式会社(現・FIDIA)が2015年に立ち上げた人材事業部が前身となっています。
――本書に、橋本雄一さん(現・執行役員CRO)が石田さんを「人材業界で最も優秀な人」として森社長に引き合わせた当時の話が書かれています。前職も人材業界で、ヘッドハンティングでFIDIAへ入社されたのですか?
石田:はい。前職は大手人材派遣会社で、コールセンター派遣部門の法人営業・スタッフ管理に従事していました。
入社1年目で、その年に最も活躍したコーディネーターを表彰する「ベストコーディネーター」賞を受賞。5年目の2016年に、Suprieveが人材事業を立ち上げるということでヘッドハントされました。
実は転職当時は、その会社で大阪支店長の内定をいただいたばかりという時期。目標の1つだったので嬉しかったですし、転職なんてまったく考えていませんでした。そんなとき、橋本から「ある会社で人材事業を立ち上げるから、一緒にきてくれないか」と声をかけられたのです。
僕は自分の状況を説明して断りましたが、橋本が根気よく連絡してくるので(笑)、次第に「事業の立ち上げに携わるのも面白そうだな」と思うようになり、ついに森社長と面談へ。
結果的には、森社長と話をしたその日に転職を決めました。
――転職を決意した一番の理由は何だったのでしょうか?
石田:前職の人たちは大好きでしたし、今でも交流があります。
しかし、転職の動機を語るなら、僕が前職を含めて長らく身を置いた派遣業界全体の話から始めさせてください。
派遣業界の雇用形態は、登録型派遣といわれるものがスタンダード。派遣会社とスタッフは、仕事が発生するごとに雇用形態を結ぶ形で、契約期間が終われば雇用契約も終了します。
そうなると、収入や待遇が不安定になることから、スタッフの離職率はかなり高くなってしまうのです。
では、なぜそんな登録型派遣が成り立つのかというと、「100人辞めても、101人採用すればいいじゃないか」という考えが業界全体に根づいているからでしょう。雇用を守るどころか、その真逆ともいえるやり方に、僕はずっと違和感を覚えていました。
そこで、かねてより内に秘めていた「業界の構造を変えたい」「人が辞めない人材会社をつくりたい」という想いを森社長に語ったところ、実は森社長も同じ想いであることがわかったのです。
森社長から、その場で「正社員派遣(正社員として雇用後にクライアントに派遣する)」はどうだろう?」とのアイデアをいただき、すごくワクワクしましたね。
スタッフを正社員で雇用できれば、安心して働いてもらえるので定着率アップにつながるのは確実。僕がずっと願っていた「人が辞めない人材事業」がついに実現するかもしれない!――その明るい未来が見えたからこそ、転職しようと思えたのです。
ついに2300人以上が働く人材会社が誕生!
――石田さんが人材事業の立ち上げメンバーとなってから現在まで、人材事業はどのように変化していきましたか?
石田:森社長をはじめ、立ち上げメンバーと想いを一つにして、正規雇用の派遣事業を一気に拡大させました。
事業2年目に黒字化、4年目に年商20億円を突破し、6年目で全国4拠点・従業員1000名・年商35億円へと成長。そのタイミングの2020年7月、人材事業を分社化してEvand株式会社が設立され、僕は2021年2月に代表取締役となりました。
8年目には全国7拠点を運用し、従業員2300名超・年商65億円へ成長しています。
――FIDIAの従業員数は2500名以上ですが、そのほとんどがEvandのメンバーということですね。
石田:そうなりますね。とはいえ、正社員になれば辞める人が減るかというと、実はそんな単純な話ではなかったのです。
ここまでの道のりは、紆余曲折の連続だったのですが……それは次の機会にお話ししましょう。
『スタートアップ芸人』には、上記の転職時の濃厚なエピソードだけでなく、人材事業をどうやって仕組み化したか、具体的なノウハウもてんこ盛りなので、転職や新規事業で悩んでいる方には大いに参考になるかもしれません。