日揮本社写真:長田洋平/アフロ

プラントエンジニアリング国内最大手、日揮HD(ホールディングス)の2024年3月期の連結最終損益は赤字に沈んだ。既に第3四半期までに国内外の案件で採算悪化を見込んでいたが、サウジアラビアの大型案件の不採算も発覚し、黒字の見込みから一転、78億円の赤字となった。ここ数年、海外の大型案件などで順調な業績を残し、脱炭素関連プロジェクトなど新規領域にも積極的に展開していた同社に何が起きているのか。同社を直撃した複合リスクの正体を解説する。(エンジニアリングビジネス編集長 宗 敦司)

プラント最大手の日揮の
赤字転落は22年3月期以来

 日揮HD(ホールディングス)は日本のプラントエンジニアリング企業最大手で、手持ち受注の8割強を海外のプラント建設プロジェクトが占める。しかもLNG(液化天然ガス)や石油精製、石油化学など受注金額が数千億円から1兆円を超えるような大規模プロジェクトを得意とする。海外でのプロジェクトの知見が豊富で、国内よりもはるかに高いリスクにさらされながら、多くのプラント建設を遂行してきた会社である。その日揮が2024年3月期決算で当初予想の最終黒字から下方修正し、最終赤字に転落した。

 もちろん、これまでも大きな不採算案件が発生した苦い経験も1つや2つではない。例えば17年3月期にはクウェートの石油精製プラント案件で220億円の赤字を計上。さらに22年3月期にはオーストラリアのLNGプロジェクトで460億円の特別損失を計上し、最終損益は355億円の赤字となった。

 こうしたリスクの高い市場での事業活動を継続すべく、同社ではプロジェクトマネジメントやリスク管理の高度化を図ってきており、最近では比較的業績が安定していた。それがなぜ複数の大型プロジェクトで不採算が発生したのか。次ページでは、赤字の原因となった5件の採算悪化プロジェクトを見ていくとともに、同社を襲った複合リスクの要因を探っていく。