東京都内で開かれた記者会見で厳しい表情を見せるトヨタ自動車の豊田章男会長東京都内で開かれた記者会見で厳しい表情を見せるトヨタ自動車の豊田章男会長 Photo:JIJI

自動車を量産化するために必要な型式認証試験を巡り、新たにトヨタ自動車を含む5社でも不正が発覚した。国土交通省による調査の指示を受けて判明したもので、自動車メーカーの企業統治(ガバナンス)不全が浮き彫りとなった。トヨタの記者会見ではルールの見直しを提言する場面もあったが、ガナバンス強化を急がなければ業界全体の信頼を損ないかねない。(ダイヤモンド編集部 宮井貴之)

トヨタ自動車含む5社で不正発覚
うち3社の6車種が出荷停止に

「トヨタグループの責任者として、お客様、クルマのファン、ステークホルダーの皆様に心よりおわび申し上げる」――。3日、東京都内で開かれた記者会見で、トヨタ自動車の豊田章男会長はこう陳謝した。

 昨年にダイハツ工業と豊田自動織機で不正問題が発覚したことを受けて、国土交通省が2社を除く自動車メーカー85社に調査・報告を指示。5月31日までにトヨタは7車種、マツダは5車種、ヤマハ発動機は3車種、ホンダが22車種、スズキが1車種で不正があったとそれぞれ国交省に報告した。

 国交省はトヨタ、マツダ、ヤマハ発動機の3社については基準への適合が確認できるまで、計6車種の出荷を停止するよう指示した。85社のうち、トヨタなど17社はまだ調査を継続しており、今後、不正がさらに拡大する可能性もある。

 具体的には、トヨタによる不正の6事案のうち、衝突試験でエアバッグが自動で作動するように加工したり、燃料漏れがないか確認する後部衝突試験において法規で定められた重量より重い台車を使って大きな衝撃で評価したりしていた。対象は生産終了したものを含めて170万台に上る。

 レクサス向けのエンジン出力を確認する試験で、狙った出力が得られなかったことから、狙った出力が得られるようにコンピューター制御を調整したデータを使用するなど悪質な事例もあった。

 ホンダでは、騒音試験において法規で定められた基準より厳しい設定で試験を行っていた。ほかにもエンジンの出力試験では再試験を実施する必要があるにもかかわらず、データを書き換え虚偽の数字を記載するなど三つの不正が発覚した。ホンダはトヨタの170万台を上回る325万台が対象となった。

 なぜ、認証不正がダイハツ工業や豊田自動織機にとどまらず、他メーカーでも不正が相次いだのか。次ページでは、認証不正が多発した背景について明らかにする。