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ここ数年「怪談ブーム」といわれて久しい。「怪談師」という肩書で活躍するプロが登場し、彼ら・彼女らが登場する怪談ライブや怪談バーには、その語りを求めて人が集う。さらに有料コンテンツやグッズ課金など、音楽や演劇と同じように熱狂するファンの存在がそこにはある。いつの時代もその時代に応じた形で怪談は身近にあったが、現代のこの現象は本当に「ブーム」なのだろうか?怪談ファンの本音と、怪談コンテンツ配信に携わった事情通の見解を交え、オカルトやスピリチュアル系コンテンツの変容にも触れながら考察する。(アステル 今岡由季恵)

「怖い話」は、人気の
「耳で楽しむコンテンツ」?

「耳で楽しむコンテンツ」と聞いて、何を思い浮かべるだろうか。

 多くの人にとってはまず「音楽」、次に「ラジオ」といったところではないか(一言でラジオといっても、しゃべりからスポーツ中継、アイドルやアニメまで幅広いが)。近年では読書にも「オーディオブック」という選択肢がある。

 十数年前、筆者は「怪談の朗読を聴くのが趣味」という人の存在を初めて知った。リラックスタイムに音楽でもおしゃべりでもなく「怖い話を喜んで聴く人が一定数いる」という事実に、正直、衝撃を受けた。

 しかし思い起こせば同じ頃、毎年参加していた夏のキャンプ型音楽フェスでは、稲川淳二氏による深夜の怪談ステージがすでに定番だった。毎回、人気アーティストのライブに匹敵する大盛況ぶり。それでも当時の筆者は「真夏のイベント会場だから特別な需要があるのでは」と思い込んでいた節がある。

「怪談バー」や「怪談師」は
10年以上前に登場

 調べてみると、札幌・すすきのに、日本初といわれる「怪談バー」が登場したのが2011年。怪談バーや「怪談師」が記事などに登場し始めたのは2013年頃だ。それからすでに10年以上たっている。

 筆者の周囲やSNSでも、怪談ファンを公表する人をよく見かけるようになり、いわゆる「バズり」ではなく、じわりじわりとその数を増やしているように感じる。こうした動きを「新たな怪談ブーム」とする見方もあるが、これは果たして本当に「ブーム」なのだろうか?

 まずは「聴く怪談」の魅力を、ファン歴20年近くという40代の男性会社員・Aさんに尋ねた。

「聴いて『怖い思いをしたい』というのではなくて、私は怪談に“味わい”を求めているんです」