「ホラー映画や怪奇小説にはない“味わい”」
ファンが語る聴く怪談の魅力

 え? 怪談にも“味わい”があるのか……。意外な回答だった。

 なお怪談ファンにもスポーツやアイドルなど他のジャンルと同じく、さまざまなジャンルの好みやグラデーションがある。それを前提に「いちファンの見解」として紹介する。

「実話かどうかも問題じゃなくて。『話芸』という見方もあるけど、怖がらせるのが上手なのがいい、というわけでもない。なんなら人の声じゃなくてもよくて、実際、『ゆっくり怪談』も好んで聴きます」

「ゆっくり怪談」とは、いわゆる「ゆっくり実況」の怪談版のことで、音声合成ソフトで声が充てられている怪談動画のことだ。その無機質で抑揚のない声が、かえって話の怖さを際立たせるといい、確かにそれは想像に難くない。

「当時ニコ動(ニコニコ動画)でアップされていた怪談を全部聴き尽くして、一度聴いた話ばかり再生されるようになったときには『もう他にないのか…』と、ガッカリしました」

 ちなみに当時聴いていた朗読は、匿名掲示板・2ちゃんねるのオカルト板に投稿された体験談、もしくは創作が主流。特に「洒落怖(しゃれこわ=シャレにならないほど怖い話)」という有名スレッドに投稿されたものが多かった。

 そしてホラー映画や怪奇小説に関しては「あくまでも作品なので、全然別物」と話す。確かにAさんのいう‟味わい”は、作り込まれた映像や文章からは感じることができないだろう。

 文章といえば「『営業のK』さんのブログはよく読んでいた」という。営業のK氏とは、その名の通り金沢在住の営業職の会社員で、会社のブログに怖い話を書き連ねていたのが注目を集め、現在は兼業作家として活躍中だ。

「稲川淳二さんの『怪談ナイト』にも、昨年初めて参加しました。生で聴くと、稲川さんの訛りが何ともいえず……。ショーとしても世界観が完成していて、さすがだなと思いました」(Aさん)