お茶の間でオカルト企画を楽しんでいた世代が
直面した「心霊現象よりもっと恐ろしい」こと
怖い話といえば、昼のワイド番組の特集企画「あなたの知らない世界」を思い浮かべる人が多いかもしれない。視聴者の心霊体験を元にした再現ドラマに専門家がコメントする企画だ。Aさんも夏休みになるとよく観ていて、母親が電気を暗くして盛り上げてくれたという。1980〜90年代は投稿心霊写真を集めた本も小学生に人気だった。
一方で、科学的にオカルト現象を否定する意見や、信じる派・信じない派の議論を聞ける機会もあった。お茶の間でオカルトが、絶妙なバランスでエンタメとして成立していたように思う。
しかし1995年のオウム真理教による地下鉄サリン事件などをきっかけに、TVからはオカルトやスピリチュアル系企画が激減。画面で見た阪神淡路大震災の光景しかり、思春期の筆者も「心霊より、人間や自然のほうが恐ろしいのでは…」と気付かされた年だった。
2000年代後半になると、地上波でも都市伝説やスピリチュアル系番組が再興する。そしてこの「オカルト番組空白期」に、怪談好きの受け皿になっていたのが巨大掲示板やブログ投稿だ。ユーザー投稿をもとに事故物件の情報をマッピングするサイト「大島てる」も、新たな形で怖さを可視化し、サブカル界隈から話題となった。
そして先に述べた通り、2013年頃の怪談師や怪談バーの登場につながる、という流れだ。媒体が変わっても投稿者は常におり、それを「誰が・どこで・どう伝えるか」が変化しつづけている。
そこで次は、現在の「怪談ブーム(?)」をよく知る事情通に話を聞いた。
「今、最も怖い話を語る者」を決めるイベント「OKOWA(おーこわ)」(現在は活動終了、記録や動画は公式サイトより閲覧可能)で配信現場に携わり、怖い話を200本以上見届けたという深川正英さんだ。現代の「聴く怪談」は、ファンにどのように受け入れられているのだろうか。