農地面積に応じた金額を支払い
レモン農家の収入を安定化

 一方、ポッカサッポロの土屋氏は、レモン農家への就農希望者の多さに当初は驚いたという。そして、彼らがレモン農家を希望する理由をこう述べる。

「レモンはこの数年、市場での取引価格が伸びているものの、やはり他の農家同様、誰でも儲かるわけではありません。しかし、大崎上島町もそうですが、他の広島地域でもレモン農家をやりたいという人は多いんです。最初はその多さに驚いたのですが、やはり皮加工もできて、6次産業化に取り組みやすいのはレモンの大きな強みです。生産だけではなく、クリエイティブに事業を経営することにも興味がある人には、レモン栽培は魅力的に映るのかもしれません」(土屋氏)

 また、現在ポッカサッポロでは、試験的に契約農家を募っているが、これもレモン農家にとってプラスになる。

「具体的な金額は控えますが、弊社では契約農地面積に応じ、年間の管理費を前もってお支払いします。なので、気候不良で収穫量が減ったとしても、一定額収入につながると思います。また、収穫した果実は、管理費とは別に一定額で全量買い取りします。」(土屋氏)

 ポッカサッポロとの共同事業によって、小さな離島では今までになくレモン農業が盛んになっている。こうした現状について、坂田氏はこう話す。

「近年は国産レモンの単価も上がっており、それに比例してレモン農家の収入も上がりつつあります。ポッカサッポロさんとの振興事業も相まって、島内でのレモン振興の機運は高まっていますね。70歳を超えた人もレモンの苗木を植えようかと話しているほどです。また、移住希望者に対しても、農業の研修を始める前に、お試しで島内生活ができるようなトライアルハウスを用意しています。最大3カ月居住でき、島内のお祭りなど行事も経験できます。トライアルハウスは2棟ありますが、どちらか一方は常に埋まっているほど人気です」(坂田氏)

 大崎上島町とポッカサッポロによるレモン振興は、官民による地域活性化の成功例になりつつあるようだ。