レモンの生産、加工のみならず
カフェ運営を手がける移住者も

 ただ、レモンに限らず、新規就農にあたっては、初期費用やノウハウ習得、そして経営が軌道に乗るまで時間がかかることなど、非常に多くのハードルがある。大崎上島町ではこのあたりのサポートも可能な限り行っている。

「1年間の研修中、月6万5000円の補助を町から出しています。研修中は『親元』と呼ばれる先輩農家の元で、経験とノウハウを積んでいただきます。住み込みではないですが、農業のことから近所付き合いまで教えてもらいます。農家として自立するとき、町が苗木購入の補助を行うなど、可能な限りの支援は整えております。現在、研修中の就農希望者は30人ほどいます」(坂田氏)

 ちなみにこの研修には年齢制限があり、55歳以下までである。こうした研修を終えてからも、サポートは続く。

「年収225万円という目標を設け、まずは3年ほどで、それをクリアできるようサポートします。また、レモンだけでは天候による収穫減リスクが大きいので、別の作物(かんきつ類)を育てるような指導も、親元とともに行います。ゆくゆくは、年収450万円を超えるのが目標ですね。結構ハードルは高いですが、研修を終えた人の7割ほどはクリアしています。完全に独立するまでは4年程度かかると見ています」(坂田氏)

 レモンは皮や果肉も含めて捨てる部位がない。その特徴を活かし、ジャムやスイーツの開発、またカフェ運営など、(生産から加工、販売までを手がける)6次産業化に取り組む農家も大崎上島町にはいるという。

「2011年に移住された岩﨑さん夫婦は、ハウスレモン、露地レモン、みかん、ブルーベリーなどの果樹を栽培し、規格外になった作物をジャムやジュース、ドレッシングなどに加工・販売しています。2020年秋には『岩﨑農園カフェ』をオープンさせ、島を代表する農家になりました。『就農10年後には、岩﨑さんのような農家になってほしい』と就農者には伝えるほど、岩﨑さんはモデルケースになっています」

岩崎農園写真提供:岩崎農園