最終的に1匹のオスがマウンティングに成功し、メスとカップルになる。数時間交尾をした後、交尾器の結合を解くが、オスはメスの背中に乗ったまま、メスが卵を産むまで護衛をする。自分の精子が卵の受精に使われるように、オスは産卵までメスを見張る必要があるのだ。

 オスがどのように産卵中のメスをガードしているのか観察することができた。他のライバルオスが近づくと、ガードしているオスは体を小刻みに揺らし、またカラフルな翅をばたつかせて威嚇し追い払う。私的には何一つ脅威を感じないが、バッタの世界では効果的なボディーガード術なのだろう。このようにして、オスは自分の精子だけが卵の受精に使われるようにしている。

 ダグが今回の観察結果を喩えてくれた。

「ここで、1920年にアメリカで有名な銀行強盗、ウィリー・サットンが100軒の銀行を襲ったという笑い話を紹介しよう。

 なぜ銀行を襲ったのかと聞かれたウィリー・サットンは、“そこに金があるからだ!”と答えた。なぜラバーのオスは丘に集まるのか?なぜならば、そこにメスがいるからだ!私たち人間も同じのはず。なぜ男はナイトクラブに行くのか?そこに女がいるからだ!」

 調査中、砂利道にクマがいた。50メートルは離れていただろうか。私を見つめてきた。野生のクマを見るのは初めてだが、背中を見せると襲われると聞いたことがあり、たじろがずにビデオ撮影する。ブログのネタになるぞ、しめしめと、うまいこと撮影できた。

 ダグと合流し、クマ(ベアー)がいたと伝えると、ここいらにはクマはいないから見間違いだと否定される。クマは英語でベアーであることは知っていたが、別の呼び方でもあるのだろうか。動画を見せると、やはりベアーであっており、大変驚かれた(日本に帰国後、クマが目撃されたことがニュースになったとダグから連絡があった。私はその第一の証拠を手に入れていたことになる)。

 クマ、ワニと危険動物のオンパレード地帯での調査を無事に終え、イリノイへと戻った。