2024年5月の全国企業倒産は1009件(前年同月比42.9%増)で、2013年7月(1025件)以来、10年10カ月ぶりに月間1000件を超えた。件数は26カ月連続で前年同月を上回り、連続記録は歴代3番目の長さまで伸びた。コロナ禍の企業倒産は、ゼロゼロ融資に代表される各種支援策のかいもあって、歴史的な低水準に封じ込められた。だが、コロナ禍の落ち着きに反比例するように増勢に転じている。さらにコロナ禍の出口で、円安・物価高・人手不足に見舞われ、傷んだ企業に追い打ちをかけている。このペースをたどると、倒産は12年ぶりに年間1万件超えが現実味を帯びている。(東京商工リサーチ情報部 増田和史)
「コロナ関連倒産」
年内にも累計1万件に
5月の企業倒産は全地区、全産業で増加した。一方で、負債総額は1367億6900万円(前年同月比50.9%減)にとどまった。件数が1.4倍増に跳ね上がった一方で、負債総額が半減したのは、小・零細企業が増えたことを示す。
負債1億円未満が7割以上(755件、前年同月比47.4%増)、従業員10人未満が約9割(905件、同42.0%増)と、小・零細企業が倒産件数を押し上げている。経営不振に陥り、回復のメドも立たず息切れや事業継続をあきらめた倒産が後を絶たない。
5月の倒産のうち、「コロナ関連倒産」は約3割の302件発生した。これは今年最多で、歴代でも月間3番目の高水準だった。業種別では、最多が飲食店(45件)で、次いで総合工事業(21件)、職別工事業(16件)が続く。
東京商工リサーチは、新型コロナウイルスの影響が倒産の要因になったと確認できたものを「コロナ関連倒産」として集計してきた。
コロナ関連の破たん第1号は、2020年2月の愛知県・西浦温泉にある老舗旅館だった。経営不振から抜け出すため、中国人団体ツアー客の獲得に活路を見出し、活況を呈していたが、コロナ禍で予約キャンセルが相次ぎ経営が悪化した。まさに、コロナ禍当初の混乱を象徴する倒産劇だったが、こうしたインバウンド消失が直撃した宿泊業や営業制限を受けたサービス業、小売業が真っ先に犠牲となった。
その後もコロナ関連倒産は毎月発生し、件数は増勢を強めた。宿泊業や外食産業などサービス業だけでなく、工期延長や案件見直し、資材不足で資金繰りが狂った中小建設業者や、サプライチェーンが混乱した製造業などの間接被害型も目立ち、幅広い業種に波及した。
コロナ禍では、政府の資金繰り支援策が倒産抑制に劇的な効果をみせた半面、コロナ関連倒産だけは増加した。疲弊し、支援の網をもってしても救われなかった不振企業の深刻さを物語る。
コロナ関連倒産を月平均でみると、2020年の72.8件から、2021年は139.5件、2022年は191.2件、新型コロナが5類移行した2023年も260.7件と右上がりで増えてきた。脱コロナが進む2024年は1~5月の平均が255.4件と初めて減少に転じたが、高水準にあることは変わらず、第1号発生から2024年5月までの累計は9176件に達した。現状のペースで推移すると、夏場過ぎには累計1万件を超えるのは確実だ。