なぜ池井戸作品に魅せられるのか
日本橋三井タワー三井本館 Photo:PIXTA

6月8・15日号の「週刊ダイヤモンド」から池井戸潤氏の小説「ブティック」の連載が始まった。主人公は東京中央銀行に勤める雨宮秋都だ。雨宮は花咲舞のように熱い正義感を持ったはねっ返りなのか。半沢直樹のように“ちょい悪”で策略を巡らすのだろうか。これまでの主人公たちの誕生秘話と、池井戸氏が語る創作の真髄をご紹介する。(ダイヤモンド編集部 浜根英子)

花咲舞と半沢直樹が
誕生した意外な理由

 社会現象を巻き起こしてきた池井戸潤氏。「週刊ダイヤモンド」2024年6月8・15日号から開始した連載小説「ブティック」を一層楽しむために、これまでの作品を振り返ってみよう。

 まず思い浮かぶのは、再びドラマ化された「花咲舞が黙ってない」シリーズだろう。熱い正義感の持ち主である花咲が、銀行の悪事に真正面からぶつかっていく様は爽快だ。

 実は池井戸作品の中で唯一の女性主人公で「男性ばかりを主人公にしていたので、今度は女性を描いてみよう」(2017年9月26日号「婦人公論」)と思ったのがきっかけだったという。

花咲舞シリーズ花咲舞シリーズ 拡大画像表示

 そして決めぜりふ「倍返し」で流行語大賞を取った「半沢直樹」シリーズ。

 池井戸氏は「当時、銀行員が出てくる小説というと『銀行=悪者』という論調のものが殆どでした。貸しはがし、貸し渋りをする悪いところ、というイメージです」「悪い役割だけではない、むしろ銀行マンが主人公になって、市民を助け、活躍する小説があってもいいのではないか、という思いでした」と語る(20年5-6月号「調査情報」)。

 威勢のいい毒舌を放ち、“ちょい悪”で策略を巡らせ、圧力を打ち負かす痛快な半沢はこうして生まれた。

半沢直樹シリーズ半沢直樹シリーズ 拡大画像表示