なぜ池井戸作品に魅せられるのかPhoto by Yoshihisa Wada

ロイヤルホールディングスの菊地唯夫会長は、1988年に日本債券信用銀行(現あおぞら銀行)でキャリアをスタートさせた元バンカーで、「花咲舞」シリーズや「半沢直樹」シリーズなど、池井戸潤氏の全作品を読破する大ファンだ。菊地氏は、池井戸作品で描かれる組織と個の関係に、多くの読者は惹きつけられるのではないかと話す。(ダイヤモンド編集部副編集長 片田江康男)

頭取秘書として見た金融危機
「半沢直樹」でよみがえる当時の記憶

 ファミリーレストラン「ロイヤルホスト」や「天丼 てんや」などの外食事業に加え、ホテル事業なども手掛けるロイヤルホールディングス。2010年に社長に就任し、19年から会長を務める菊地唯夫氏は、池井戸潤氏の作品のほぼ全てを読破する大ファンだ。

 菊地氏は日本債券信用銀行(現あおぞら銀行)に在籍していた時代、MOF担(対大蔵省折衝担当者)を務めたほか、巨額の不良債権で経営危機に陥る過程を、頭取秘書として目の当たりにした経験を持つ。そのため、金融庁検査や不良債権問題が描かれる「半沢直樹」シリーズを読むと、当時を思い出すと話す。

 また、池井戸作品がこれほど多くのビジネスパーソンを惹きつける理由の一つは、どの作品においても組織と個の関係性について丁寧に描かれているからだと指摘する。菊地氏は特に、「ノーサイド・ゲーム」で組織と個の関係性が修復される過程に引き込まれるという。

 大ファンを自任する菊地氏に、次ページで池井戸作品の魅力について詳しく聞いた。