息子と2人でドジャースタジアムへ

 夢が叶っていく。夢が叶っている最中。

あばれる君、息子とロスへ行く!恐竜博物館で親子ゲンカが呼んだ「まさかの奇跡」とは?イラスト:和田ラヂヲ 拡大画像表示

 これは、芸人として日々を送っている中、お仕事をいただける喜びを忘れかけると、決まって心の中で唱える僕のおまじないです。中学1年生で、夢のまた夢のまた夢のプロ野球選手をあきらめてお笑い芸人を志した僕は、見たことのない土地や景色や国に想いを張り巡らせていました。まだ自分の知らない世界がある。そこでは自分のまったく知らない人たちがまったく別の生活を営んでいる。そう思うととてつもなくワクワクしたのです。

 そして今、僕は息子と飛行機に乗っています。行き先はロサンゼルス。かっけえ。ジュージュー喚くステーキやチーズがとろけだすハンバーガー、バカでかいコーラ。高い天井に広い庭。独り言をぶつぶつ言いながらフードをかぶって歩く人。なにもかもスケールのでかいアメリカに30歳ぐらいから漠然とした憧れを抱いていました。アメリカ憧れはじめが人生のド中盤にやってきたのです。そのアメリカに息子と行くのです。しかも自分で取ったエアーチケットです。

 CAさんとは片言ですが英語でなんとか会話をします。機内食が届きました。見た目は、「泡盛を飲んだおばあちゃんがベロベロで盛り付けた残り物弁当」と言ったところですが、これからの楽しい旅のことを考えるとじゅうぶん食欲をそそりました。喜びながら息子と目を合わせました。

 うーん。夢が叶っています。このような瞬間をずっと願って生きてきました。

 今回のいちばんの目的は、大谷選手の移籍が決まったドジャースの本拠地をこの目で見ること。それだけでじゅうぶんです。隣の息子は、大谷さんに会えるかなとニコニコしています。いつも、願えば夢は叶うと息子に教え続けてきましたが、「さすがにそれは無理だよ」と鼻で笑って睡眠態勢に入りました。大人の僕はオフシーズンの球場に選手がいるはずないと思っています。なにも知らない息子は毎日ずっと球場に選手がいると思っています。選手に会えると思っています。寝息をたてて涎を垂らす息子のその顔がとても愛おしかった。

 飛行機の着地音に乱暴に起こされました。空港を出た途端、ようこそと言わんばかりにロサンゼルスの生暖かい風が全身を包んでくれました。とうとう来たぞと思いました。今も、この瞬間も、夢が叶っていると感じました。

 ドジャースタジアムに向かう前にロサンゼルスの自然博物館で恐竜の化石を見まくりました。もうそろそろドジャースタジアムに行こうと言っても、息子はまだ恐竜の化石に夢中でもう1周見たいと言います。大人の僕はじっくり1周すればじゅうぶんでした。でもまあ。息子の旅でもあるからとことん付き合おう。ミュージアムショップで、ツバが恐竜にかじられたデザインの帽子を買うか買わないかで息子と揉めました。粘る息子に根負けし、帽子を買ってあげて、やっと球場に向かいました。