脳の「分散系」と「集中系」の
バランスを常に取ることが重要だ

 時には分散系を活性化し、無意識の中の多くの記憶にアクセスし、集中系の脳を休ませることが必要となる。もちろん、これは逆も言えることで、分散系だけを過剰に活性化してしまうことの危険性も説明しておきたい。集中系と同じように分散系における代謝負荷から、その部分のニューロンやグリア細胞が死んでいき、最終的に認知症への道を進んでいってしまうことになる。

 そして、分散系の過活動が、うつ病とつながることも明らかとなっているのである。うつが悪化すると、「過去に縛られ、現在と未来が考えられなくなる状態」に陥る。これはつまり、同じ否定的なことをグルグルと何度でも考えてしまう「反すう思考」という状態になっているのだと言える。

 過去の記憶に囚われ、うつっぽいなと感じた場合には、分散系が過活動になっているわけであるから、何かに集中する時間を作りたい。仕事や勉強に集中できるならそれは最高だが、なかなかそうはうまくいかないことも多いだろう。現在に集中することが重要になるので、テレビゲームでもユーチューブでも、思いっきりのめり込んでしまおう。短時間であれば、それによって分散系が休息をとることができる。マインドフルネスも自分の身体の部位や呼吸などに意識を向けることで、集中系を活性化する効果がある。

 分散系は脳の巨大なネットワークなので、何かに集中することは、その大きな領域を休ませることにつながる。脳の休息法として重要なのだ。

 つまり、集中系も分散系も、偏ることが良くないのであって、両者のバランスを常に取らなければいけないということだ。特に、世間一般では何かに集中することが善で、ぼーっとしていたり、いろいろと注意の対象を移ろわせることは悪、とみなされてしまいがちなので、集中に対する認識をアップデートする必要性を強調しておきたい。