効率化の追求が
逆に仕事から創造性を失わせる

 データを眺めてその意味をあれこれ模索する時間や、「あーあ、わからないな」とぼーっとする時間は、すぐに成果として現れることがないため、「非効率的」とのレッテルを貼られてしまう。

 だが、「集中系」と「分散系」の働き方を知れば、こういったあれこれ物事の意味を考える時間が、創造性を発揮するために必要なのだということが理解できるのではないだろうか。仕事の効率化の努力がむしろ仕事の創造性を低下させ、全体として見た時の仕事の生産性も低下させてしまうのである。

 ハーバード・ビジネススクールのテレサ・アマビールは、作業効率を求めて時間を強く意識すると、創造的な思考が減り、最終的なプロジェクトの成果が減ってしまうことを指摘した。時間を意識するというのは、分散系を排除していくことにつながるからだ。

 アダム・スミスの『国富論』が示した「効率化の追求」が経済学の原理原則となり、多くの人が追求する目標となった一方で、近年は心理学的な側面から、効率化の追求が戦略的な計画の喪失や創造性の低下につながることが示され始めている。効率化は1つのことに意識を集中させることで達成されるが、それは脳を広く使うことから離れることを意味する。

 作業の効率化を図ることはもちろん必要であるが、あくまでも分散系とのバランスを考えて、ある程度長期的な視点で効率化を考えないと、結局最終的な成果を減らしてしまうことにつながってしまうのではないだろうか。実験結果を見て、あれこれ思い悩む時間も決して無駄ではなかったのである。

「飽きた」「疲れた」を作る
脳に負担をかける3つの物質

 脳はニューロンとグリア細胞という生きた細胞が協調して働いて機能を発揮しているのだが、この機能を適切に管理していくためには、これらの細胞たちの膨大な代謝活動が必須となる。大量のエネルギーと大量の酸素を消費するのだ。その副産物として、脳が働くとその代謝活動の老廃物と活性酸素が蓄積することになる。