(8)自由業
 回避性の人にとって究極の理想は働かないで生きていくことだろうが、それに次ぐ理想は、自分のペースで気ままに仕事ができる働き方だろう。会社といった場所や時間に縛られず、上司や会議からも解放される。自宅で仕事をすることもできるし、自分のペースで仕事量を調整することもできる。休みを取りたければ、取ることも自由だ。

「生きるのが面倒くさい人」に向いている仕事は?職場でどのようにふるまえばいい?『生きるのが面倒くさい人 回避性パーソナリティ障害』
岡田 尊司 (著)
定価990円
(朝日新聞出版)

 もっとも、顧客を抱える身で会社のように代わりの人に頼むこともできないため、逃げ場がなく、責任はすべて自分にのしかかってくる。その点が、回避性の人には向かないのだが、いいところだけ理想化して憧れる人も多い。

 自由業で暮らしていくためには、特別な専門技能を独り立ちできるレベルまで身に付けた上に、取引先も確保しなければならない。最初から自由業でというのは、なかなか難しい。

 回避性の人は、人付き合いがすぼみがちなので、あまりに早く自由業になると、世間とのパイプを作らないままに孤立してしまう恐れもある。したがって、最終的に自由業で独立することを目指すとしても、あまりに早くから自由業になってしまうことはお勧めできない。社会に出て、いろいろ経験してからの方がよいだろう。

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 以上が、回避性の人にも向いている仕事、というより、回避性という特性を上手に活かして能力を発揮するための、ちょっとしたアドバイスだ。大切なのは自分自身や身近な人の「回避性」を理解して、それをどうプラスにするか。岡田尊司さんの『生きるのが面倒くさい人』(朝日新書)には、そのために必要な知識とヒントが詰まっている。

AERA dot.より転載