毎日、辞めたいと思いながら働き続けた5年があったんですよ。その耐えた5年があるから、ライターになってからは大抵のことが苦しくないんです。しんどいときもあるけれど、あの時を考えればまだマシに思えるというか。
自分の好きじゃない仕事で自分が怒られるのって、もう自分の中では「理不尽100%」の状態になってるんです。前向きになれる要素が一切ない。
反対に、ライターになってからは「自分がやりたかったことで怒られているんだから、それは俺のせいだろう」と、自分で責任を背負えるようになってきた。じゃあ頑張るだけだ、という気持ちが今もずっと続いてる気がします。
体が出すアラートを無視してはいけないし
「石の上にも3年」とは限らない
だから、しんどい5年間だったけれど、振り返ってみれば我慢を蓄積してよかったなっていう感覚があるんです。
カツセマサヒコ
1986年東京都生まれ。一般企業勤務を経て、2014年よりライターとして活動を開始。2020年、『明け方の若者たち』で小説家デビュー。2021年、川谷絵音率いるロックバンドindigo la Endの楽曲を元にした小説『夜行秘密』を書き下ろし。同年、『明け方の若者たち』が北村匠海主演で映画化。2024年、3年ぶりの長編となる『ブルーマリッジ』を刊行。TOKYO FM「NIGHT DIVER」のパーソナリティも務める。
でも、今回の新刊『ブルーマリッジ』で描いたように、心身に支障をきたすほどのハラスメントとか過重労働があるのであれば、その職場からは一刻も早く逃げた方がいいと思います。
会社員時代に人事畑で働いていた時、「上司がいる方だけ耳が聞こえなくなったり、頬が痙攣したりする」という症状を持った社員さんに、何度か相談を受けたことがありました。心が音を上げる前に、体が反応してるってことですから、人間の体はそこまで精密にできているのかと、当時はかなり強いインパクトを受けたのを覚えています。
それ以降、キャリアの相談を受ける時にも「体が音をあげたらそれは降参のサインで、他の仕事・職場を考えたほうがいい」とは常に言っています。本当に、心も体も、健康だけは大事です。
「石の上にも3年」とかいうフレーズもありますけど、根性論で耐えられる人は、耐えたらその後良いことがあるよという意味もわかるし、そうなる前に体調を崩すようなら、さっさと逃げたほうがいいっていう考えもすごくわかります。
一概な答えはないし、その人それぞれかなという気がしますね。