ダメな会社では、上司に気に入られようと「残業アピール」「期待させる報告」が横行する。いい会社はどうする?
そう語るのは、これまで4300社以上の導入実績がある組織コンサルタントである株式会社識学の代表取締役社長・安藤広大氏だ。「会社員人生が変わった」「もう誰も言ってくれないことがここに書いてある」と話題の著書『リーダーの仮面』では、メンバーの模範として働きつつ、部下の育成や業務管理などで悩むリーダーたちに「判断軸」を授けている。この記事では、本書より一部を抜粋・編集し、注目のマネジメントスキルを解説する。(構成/ダイヤモンド社・種岡 健)
「目標設定」をやってみる
どういう結果を残せば、高い評価がもらえるのか。
そこが曖昧だと部下は迷ってしまいます。
評価される基準がわからないと、上司に気に入られようと「残業アピール」をしたり、プロセスの段階で「期待させる報告」をしてしまうのです。
それを評価しないために、次の3つの要素を確認します。
「① 目標設定」→「② プロセス」→「③ 結果」
この順で、リーダーは部下に仕事を任せ、管理します。
それぞれのポイントでの注意点は、次のとおりです。
① 目標設定
→ できるだけ数値化する
「来月は10件の契約を成立させてください」
このように、「できるかな?」とお願いするのではなく、ちゃんと言い切るようにして伝えます。
② プロセス
→ 極力、口出ししない
何か思いつきで「もっと積極的にアプローチしないとダメじゃないか」と言いたくなる気持ちや、昔話、説教をしたくなるのをグッとこらえます。
ただし、新入社員や部署異動してきた部下には、詳しいプロセスを提示するのが有効です。
③ 結果
→ 部下からほうれんそうをさせる
「今月は10件の契約を取ることができました」
このように、言い訳がない事実だけの報告をさせることが理想です。
もし言い訳がある場合は、それをスルーする必要があります。
以上が、リーダーがやるべき「点と点」の管理です。
いい会社のフィードバックとは?
次は、部下が目標を「達成した場合」と「未達だった場合」に分けて考えましょう。
目標を達成したら、
「了解です。お疲れさまです」
と、受け止めます。
このときに、「すごいな」「やればできるな」と過剰に褒めすぎないのがポイントです。
もちろん、15件以上の契約を取ってきた場合は、大きな評価をすべきです。
そうでない限りは、結果を冷静に受け止め、「あたりまえ」の基準をブレさせないようにします。
また、目標をクリアした場合、次の新たな目標は「やや上」に設定しましょう。
そして、未達だった場合。ここで部下とどう接するかが、リーダーの役割として非常に大事になってきます。
「8件しか契約が取れませんでした」
「未達ですね。で、次はどうしますか?」
と、事実を確認し、次の行動変化をヒアリングします。
「今月の電話営業は100件で、100件中、8件が契約成立だったので、次は130件の電話をかけようと思います」
「了解です。来月は『130件の営業電話』と『10件の契約』が目標です」
と、目標の1つ手前の段階を、次の目標に加えます。
目標の1つ手前の段階を設定できるのであれば、未達だった要因の分析もできているのだと判断します。
そうやって、1つだけプロセスを加え、その目標がクリアできたら、そのときにプロセスの目標は外せばいいのです。
それでもうまくいかなかったら、どうすればいいのでしょうか。
そのときは、期間を短く設定するのが有効です。
「次の1週間で、『30件の電話』と『3件の成約ができているか』を報告してください」
というように、報告させる期間を短くします。
それでもうまくいかなかったら、今度は「2日に1回の報告」「毎日の報告」というように、期間をどんどん短くしていきます。
逆に、新入社員などの場合なら、初めは「毎日の報告」からスタートして、徐々に期間を長くしていくイメージです。
このバランスはリーダーの采配によりますが、あくまで大事なのは「結果」です。
この軸をブレさせないようにしましょう。
以上が、いい会社のマネジメント方法です。
そうはいっても、中間管理職の立場であれば、いまの会社の方針との兼ね合いもあるでしょう。
しかし、本来の目標と結果のあり方だけは理解してください。
この先、あなたが出世していき、さらに大きな責任を持つこともあるでしょうし、他の会社に移ったり、独立・起業したりすることもあるでしょう。
そのときに、ここで学んだことがきっと大きく役立つはずです。
(本稿は、『リーダーの仮面』より一部を抜粋・編集したものです)
株式会社識学 代表取締役社長
1979年、大阪府生まれ。早稲田大学卒業後、株式会社NTTドコモ、ジェイコムホールディングス株式会社(現:ライク株式会社)を経て、ジェイコム株式会社にて取締役営業副本部長を歴任。2013年、「識学」という考え方に出会い独立。識学講師として、数々の企業の業績アップに貢献。2015年、識学を1日でも早く社会に広めるために、株式会社識学を設立。人と会社を成長させるマネジメント方法として、口コミで広がる。2019年、創業からわずか3年11ヵ月でマザーズ上場を果たす。2024年7月現在、約4300社の導入実績がある。主な著書にシリーズ140万部を突破した『リーダーの仮面』『数値化の鬼』『とにかく仕組み化』(いずれもダイヤモンド社)がある。