デジタル化が進むMLB
データ駆動マーケティングの凄み
私がこのMLBの話を聞いたのは、米アドビ主催のイベント「Adobe Summit 2024」のキーノート(基調講演)でした。
Adobe Summitは毎年、米国ラスベガスで開催される大規模なカンファレンスで、同社のクラウドベースのデジタルマーケティングツール「Adobe Experience Cloud」に焦点を当てています。最新の技術トレンドの紹介に加え、著名なスピーカーや業界のリーダーによる講演やディスカッションなど200以上のセッションが行われ、デジタルマーケティングの未来を探る場として多くの専門家や企業が注目しています。
2024年のAdobe Summitは3月26日から28日(現地時間)に開催されました。特に注目されたのは、データを活用したユーザー体験の向上に関するセッションで、Adobe Experience Cloudを用いた効果的なマーケティング戦略の具体的な事例が紹介されました。また、今年のイベントではAIや機械学習を活用した新しいマーケティング手法についても多くのディスカッションが行われ、最新の技術でよりパーソナライズされたユーザー体験の提供について紹介がありました。
このAdobe Summitの基調講演に登壇したのが、MLB最高執行・戦略責任者(COSO)のクリス・マリナック氏です。マリナック氏は、デジタルを通じてMLBが行った顧客体験の改善について語りました。MLBではチケットのデジタル化を進め、2017年にはわずか14%だったデジタル化率が2023年には91%と大幅に増加しています。
このデジタル化により、顧客データの収集と分析が進みました。以前の紙のチケットでは、顧客が初めて球場に訪れたのか、何度も足を運んでくれているのかすら分かりませんでしたが、デジタル化したことで、パーソナライズが可能になりました。例えば、顧客データに基づくターゲティングにより、大谷翔平選手の本拠地以外でも、その地域の球団広告ではなく大谷選手の広告を表示することが可能になり、ファンの興味や関心に合わせた広告配信が実現しています。