日本は「半導体立国」へと返り咲けるか?NVIDIA一強に立ち向かう次世代技術開発のカギ生成AIの普及で半導体特需が訪れる中、日本は再び「半導体立国」へと返り咲けるのか(写真はイメージです) Photo:PIXTA

国際競争が激化する半導体産業の強化に取り組む日本。マイクロソフトやグーグルでエンジニアとして活躍し、複数の企業で技術顧問を務める及川卓也氏は、生成AIの普及で重要性が増すロジック半導体について、消費電力量の抑制やデバイス側での「エッジコンピューティング」に対応するなど、次世代技術の設計開発がカギになると語る。

日本政府が半導体産業
強化に力を入れる理由

 日経平均株価は2月22日、バブル期の1989年12月29日に付けた3万8957円を34年ぶりに更新し、終値が3万9098円に達しました。年始から続く株価上昇の背景には、物価高、金融緩和、円安などいくつかの要因が指摘されていましたが、過去最高値更新の一押しとなったのは、米半導体大手NVIDIA(エヌビディア)の決算が市場の予想を上回り好調だったため、日本の半導体関連株にも買いが入った影響が大きいと言われます。それほどまでに、世界では今、半導体の需要がかつてなく盛り上がり、その市場動向に注目が集まっているのです。

 日本に目を転じると、半導体産業は今、デジタル化する社会のインフラとしてだけでなく、経済安全保障の観点からも大切な局面にあります。日本政府も半導体産業の支援・育成に力を入れており、2023年度補正予算では、半導体製造や開発に関連する3つの基金に対して合計2兆円近い出資を盛り込みました。

 支援の具体策のひとつが、国策企業ともいえるRapidus(ラピダス)です。ラピダスは、トヨタ自動車、デンソー、ソニーグループ、NTT、NEC、ソフトバンク、キオクシア、三菱UFJ銀行の8社の出資で2022年8月に設立。目的は先端半導体の分野の強化、具体的にはロジック半導体の国産化です。製造だけではなく開発・設計も手がけ、2020年代後半にはプロセスルール(半導体の最小構成要素サイズ)が2nm(ナノメートル、1nmは1000分の1mm)以下の世界最先端クラスの半導体開発・量産を目指しています。

 ラピダスには日本政府から設立時に700億円の支援が出ているほか、2022年度第2次補正予算で2600億円、2023年度補正予算で5900億円の支援が決まっており、日本の半導体産業復活を担う役割が期待されています。