デルタ航空が無料で高速の
Wi-Fiを機内で提供するワケ
キーノートには、デルタ航空のCEOであるエド・バスティアン氏も登壇しました。
今年、創業100周年を迎えたデルタ航空は、これまでにも9.11やリーマンショックなど数々の危機を乗り越えてきましたが、とりわけ新型コロナウイルスによる渡航禁止は創業以来、最大の危機でした。デルタ航空はこの危機を乗り越え、現在も強固な地位を保っています。
キーノートの中でバスティアン氏は、現在のデルタ航空がアマゾン、アップル、ウォルマート、eBayに次ぐ、米国5番目のECの小売業者であることを明かしました。デルタ航空の市場シェアは20%に過ぎませんが、利益は業界の40%を占め、非常に効率的な経営を行っています。
デルタ航空のユーザー体験の良さについては、私の以前の記事『日本企業のアプリには「おもてなし」の心が足りない』でも紹介していますが、デジタル技術を用いた体験と人による接客やサポートがシームレスに連携した結果、スマホアプリやウェブを通じて、フライトの選択、チケットの予約、マイレージプログラム、座席や食事の選択、ラウンジアクセス、そして預け入れ荷物の位置情報など、多岐にわたる顧客体験が提供されています。
私は今回もこのデルタ航空を使って、Adobe Summitが行われるラスベガスに向かったのですが、予定より早く到着したらスマホアプリに花吹雪が舞っていて、ちょっとした遊び心に感心しました。次のフライト予約、レンタカーやホテルなどのレコメンドも、顧客の行動や好みのデータに基づいてパーソナライズされています。
ロサンゼルスからラスベガスへは国内線を利用しましたが、機内ではWi-Fiが無料で提供されていることに気づき、驚きました。現在、デルタ航空では国内線のフライトで、デルタ航空のロイヤリティプログラム「SkyMiles」メンバーには無料でWi-Fiを提供しています。このサービスは2024年中に国際線にも拡大される予定です。
バスティアン氏は新しいサービスを提供する際、その体験が悪ければ企業にとってはマイナスとなる可能性があると述べています。デルタ航空は単に無料でWi-Fiにつながるだけでなく、高速のWi-Fiを提供することにより、最上の顧客体験の提供を目指しているといいます。
このWi-Fiを利用するための唯一の条件は、デルタ航空のロイヤリティプログラム「SkyMiles」に加入することです。加入はもちろん無料で、機内で加入することもできます。Wi-Fiはデルタ航空にとっては新しい新規顧客とのタッチポイントです。この施策の結果、2023年にデルタ航空は新たに200万人以上の会員を獲得しています。