日本人と居酒屋写真はイメージです Photo:PIXTA

人はある程度経済的豊かさが満たされると、それ以上にお金が増えても幸福度が大きく上がることはないという。隣の芝生が青く見えて「自分も」と背伸びをして居心地悪く感じてしまったのなら、他者と比較することはやめて、自分にとって本当に“必要なもの”が何なのかを見極めることから始めよう。本稿は、海原純子『幸福力――幸せを生み出す方法』(潮文庫)の一部を抜粋・編集したものです。

人はお金がいくらあれば
幸福を感じるのか

「幸福」は、お金とどう関わっているのでしょうか。

 アメリカの経済誌『Forbes(フォーブス)』に登場する、世界の長者番付にのる人たちの精神的満足度を調査した報告があります。それによると、そのようなお金持ちの37%は、平均的な所得のアメリカ人よりも満足度が低い。長者番付にのるほどのお金持ちになったからといって、人生に満足しているとはかぎらないのです。

 日本社会に目を移してみましょう。日本では、国民総所得(GNI)が上昇した分、国民の幸福度はそれに比例して上がってきましたが、興味深いのは、ある程度上がった後、横ばいになっていることです。つまり、食べることや寝ることなどの生存に関わる部分が確保されるまでは、その幸福度は経済的豊かさに比例して上昇していきます。しかし、それらが満たされた後は、いくらお金が増えても幸福度が大きく上がっていくことはないのです。

 では、人はいくらあれば、幸福を感じるのでしょうか。1億円あれば幸福かといえば決してそうではありません。大事なことは、願望ではなく、自分にとって必要なお金がどれくらいかを知ることです。そこをきちんと見極めたうえで、必要なものがあれば、人は不幸にはならないのです。

 必要なお金は人によってちがいます。私の場合は、原稿を書くためにひとりになれて、かつ見晴らしの良い部屋があり、ちょっと旅行にも行ける余裕があるとうれしい。でも、それ以上のお金はいりません。贅沢な洋服やバッグがほしいということもありません。私のことはほんの一例ですが、私よりももっと必要なお金が多い人もいるし、少ない人もいるでしょう。それは人によってちがうので、比較する必要は全くないのです。

 大事なことは、冷静に自分を見つめ、何が必要かを見極める。感情的になるのではなく、自分と向き合い、自分を知ることです。