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今年も税務調査の時期がやって来る。国税庁は企業の税務調査にAIを導入し、昨年は近年最多の3500億円以上の追徴課税を行ったと発表した。こうしたニュースを目にすると、苛烈化する税務調査に不安を覚える人も多いことだろう。そこで、大手監査法人で長年大手企業の監査を担当し、弁護士として税務調査の最前線に立ち続ける眞鍋淳也氏が、税務調査で“ここだけは抑えておくべき”というポイントを解説する。※本稿は、眞鍋淳也『税務調査は弁護士に相談しなさい』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)の一部を抜粋・編集したものです。

うっかりミスで発生しがちな
「使途不明金」に要注意

 税務調査の対象となる企業はどのようにセレクトされているのでしょうか。人によっては「まったく心当たりがないのになぜ?」と思う方もいらっしゃるかもしれません。しかし、国税局も闇雲に税務調査をしているわけではありません。前年の決算との比較、その業界の経費率とのバランス、あるいは突然、突出した勘定の動きなどを分析し、証拠集めを行います。

 また、最近ではAIを使用して調査対象者を選別していることも考えられます。こうして「なんらかの異常値」が出た企業を税務調査の対象候補としているのでしょう。

 このような異常値を出さないためには、日頃の税務処理から気を配る必要があります。

 税務調査のきっかけとなりやすいのが、いわゆる「使途不明金」です。これは文字通り、使用用途がわからないお金を指すものです。会計処理における不備が、このような使途不明金を生み出す原因となります。

 例えば通常、支払い先や支払い金額、そしてどのような名目でそのお金を支払ったかを帳簿に記していることでしょう。また、領収書にその内容を記載して支払いを証明しておくということも少なくありません。

 しかし、帳簿にお金の使途が明記されず「取引先にその金額のお金を支払った」ということだけが記載されている場合、そのお金は「使途不明金」ということになります。まして領収書が発行されていない場合には、お金を支払ったことが証明できませんので、税務調査で聞き取りをされることになります。

 領収書が発行されない。そんなことはあるのだろうか、と思われるかもしれませんが、例えば交際費や接待費などでは領収書が発行されないことも少なくありません。取引先とのやり取りにおいて、特にこうした目的で金銭のやり取りがなされるという場合には、特に注意をする必要があります。