ニュースな本写真はイメージです Photo:PIXTA

税務調査に弁護士を立ち会わせることは今の日本では一般的ではない。しかし、法律と交渉術のプロである弁護士が立ち会うことは、税務調査官との議論を円滑に進め、双方にとって負担やリスクの伴う慣習を見直すことにも繋がるという。※本稿は、眞鍋淳也『税務調査は弁護士に相談しなさい』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)の一部を抜粋・編集したものです。

税務調査官とのやり取りは
刑事事件の弁護と変わらない

 現在、税務調査の立ち会いを弁護士に依頼するということはあまり一般的だとは言えません。その1つの理由としては、税務や会計処理に詳しい弁護士がまだまだ少ない、という状況があります。私の弁護士事務所に所属しているメンバーにおいても、これまでに税務調査に立ち会わせたことはありませんが、その理由は、やはり税務に関する知識が不足しているからなのです。しかし、税務及び会計の勉強をしてもらって、将来は立ち会うことができるよう育成しています。

 正当な法解釈ができさえすれば、税務調査官から無理難題を押し付けられるようなことはありません。税務調査で済むことなく、法廷で争うような事態に発展することもそう多くはないと言えるでしょう。

 税務調査で発覚する法人税法など税法に違反する事実は、税法違反として刑罰も法律上規定されています。しかし、刑事事件に発展して逮捕されるまでに至ることはほとんどありません。これは非常に理不尽な話なのですが、「捕まるかどうか」は「いくら脱税したか」と関係しているのです。

 こうしたことは税務に関する違反に特有のことです。他の犯罪では、金額は逮捕されるかどうかとは無関係です。例えば、コンビニエンスストアで金額の安い駄菓子を万引きしたとしましょう。その場合でも「窃盗罪」で逮捕されるというのは、比較的よくある話です。しかし、税法違反において例えば「1万円脱税した」としても、逮捕されるようなことはありません。

 ただし、税務調査における税務調査官とのやり取りに関しては、刑事事件の弁護と何ら変わることはありません。

 例えば、殺人事件の例で考えてみましょう。ここに、銃を使って殺人を行った被疑者がいたとします。その場合に、被疑者が「撃ちました」と答えたとしても、被疑者が争いたいという意思を有している場合には、裁判において被疑者の意思に反し、弁護士がそのまま「彼が銃で撃ち殺しました」と言うことはありません。