これは非常に単純なミスで、そのようなことは起こるはずがない、と感じられる方もいるかもしれませんが、単純だからこそかえって「間違えるはずがない」と思い込み、往々にしてミスへとつながることがあります。

「忘れた」で事態が悪化する前に
まず記録を心がけよう

 その他、やはり中小企業で多く見られるものとして、社長や役員の自宅とオフィスを一緒にしているという場合に、光熱費を混同してしまうというケースがあります。

 税務調査においては、こうしたことがあると、担当調査官から問い詰められることが少なくありません。回答が曖昧な場合には厳しく追及を受けることもありますので、個人経費と会社経費は適正に按分する必要があります。

 悪質な「使途秘匿金」と疑われやすいものの1つが「商品券」です。過去の事例でも、商品券を会社経費として購入し、個人で使用したり現金に換金したりということが比較的多く摘発されていますので、「商品券の購入」については税務署でも特に注意していると考えられます。これについても対策としては単純で、商品券の使途を帳簿に具体的に記載しておくということが重要となります。

書影『税務調査は弁護士に相談しなさい』『税務調査は弁護士に相談しなさい』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)
眞鍋淳也 著

 こうした領収書の管理、帳簿への記載における不備、ひいては税務調査の対象となるケースでは、多くの場合、金銭のやり取りをしたのち時間が経ってから対応したことが原因となっている場合が少なくありません。いくらその場で記録を残していたつもりでも、時間が経過すれば、どのような状況だったかを忘れてしまうということもあるでしょう。

 税務調査において忘れてしまった、あるいはわからない場合には、そのまま「忘れた」「わからない」と答えたほうがよいのですが、そもそも税務調査が入らないようにするためには、金銭をやり取りした直後に詳細を記録しておくことが重要です。

 普段からこのような「詳細を記録する習慣」を身につけておくことで、税務処理、会計処理における「異常」の発生を予防することができ、ひいては税務調査が入ることを予防できるということは肝に銘じておきたいところです。