過去10年余の日本の株価上昇とNISA(少額投資非課税制度)や確定拠出年金制度の普及などが追い風になって、家計の金融資産構成、資産所得が変わり始めた。2024年3月末時点の日銀の資金循環統計や新NISA(金融庁)の実績が公表されたことで、そうした変化がより鮮明に見えてきた。今回はこの点を取り上げよう。
結論を先取りして言うと、今後も家計の金融資産に占める「株式+投資信託」の比率は趨(すう)勢的な上昇トレンドをたどりそうだ。その結果、日本の家計所得に占める資産所得(配当、利息、賃料など)の比率も上昇トレンドをたどるだろう。とりわけ配当所得の増加が注目される。
中間所得層にとっても資産所得と勤労所得の「二刀流」家計が、今後の日本をリードする「勝ち組パターン」として定着することになるだろう。
新NISAのインパクト
まず金融庁から公表された新NISAの今年1~3月の実績を見てみよう。今年1月にスタートした新NISAの口座数は2323万口座(3月末時点)であり、旧NISAの2125万口座(2023年12月末)から198万口座(+9.3%)増えている。
1~3月間のNISA口座での購入実績は「成長投資枠」5.1兆円、「つみたて投資枠」1.0兆円だ。前者の方が後者の5倍と大きい。これは「成長投資枠」では年間限度額240万円まで一気に購入できる一方、つみたて投資枠の利用者は年間限度額120万円を12カ月で割って、月間最大10万円までの積立投資を設定しているというケースが一般的なためだろう。その結果、短期では成長限度額の購入実績の方が大きくなりやすい。
両枠合計で3カ月間に購入された個別株式は2.5兆円、公募投資信託は3.5兆円、総額6.0兆円だ。ただし既存の課税口座の投資残高を売って、NISA口座で買うという投資残高のシフトが生じているはずなので、家計の買い越し額が総額6兆円というわけではない。実際の買い越し額はいくらだろうか。