日本最大級の住宅ローン比較診断サービス「モゲチェック」(株式会社MFS)を運営する塩澤崇氏が、新時代に対応した住宅ローン本『金利が上がっても、住宅ローンは「変動」で借りなさい』を上梓しました。マクロ金融と住宅ローンの双方に精通する塩澤氏は、借金を嫌うという日本人の国民性が、これだけ借り手に有利な住宅ローン制度をつくりあげたと解説します。
(※この記事は、『金利が上がっても、住宅ローンは「変動」で借りなさい』の一部を改変し公開しています。)

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住宅ローンは、現代の日本人に与えられた最強の武器

 私は仕事柄、多くの方の住宅ローンの借り方や返済方法を見ていますが、日本人の国民性が如実に出ていると感じます。

 みんな借金が嫌いで、借金をすることが不快なのです。そのため、実はまったく理にかなっていない「頭金をたくさん入れる」「繰上返済をする」といった行動に走ってしまいます。

 これらの行動がなぜ問題なのかは後ほど説明するとして、日本人は真面目ですから、「借りたものはちゃんと返す」「できるだけ早く返す」という強い信念があるように思います。

 私は兵庫県育ちで阪神淡路大震災を経験しましたが、あのような甚大な災害で自宅が被災した人たちですら、その多くがローンを返済し続けようとしたと聞きます。他の国であれば、多くの人がローン返済の免除を求めたり、自己破産を選ぶことでしょう。「ローンを早く返さねば」という日本人の意識は非常に強固です。

 とはいえ、このような真面目な国民性があるからこそ、私たちは低金利で住宅ローンを借りられるというのも事実です。

 住宅ローンを貸し出す銀行は、「貸し倒れ(貸したお金が返ってこないこと)」のリスクを金利に反映させています。そのため、貸し倒れが多い消費者金融などは高金利になっていますよね。

 住宅ローンの場合、貸し倒れ率はとても低く、1000件に1件程度の割合といわれています。経済的に苦しい状況であっても、家を守るためにも住宅ローンだけはきちんと返そうとする日本人が多いことがわかります。

 その結果、今は35年間の住宅ローンが0.1%台で借りられる銀行もあるという、あり得ないバーゲンセールが起きています。後ほど説明しますが、これだけ低金利だと、資産運用を組み合わせることで実質的に「金利ゼロ」を実現することも不可能ではありません

 加えて、住宅ローンなどの借入れには、「期限の利益」というメリットがあります。たとえば、「明日返さなくてはいけない1億円」と「35年後に返せばいい1億円」を比べてみましょう。明日返さないといけない1億円はほとんど意味のないお金です。一晩預かって返すだけですから。一方、35年後に返せばいいといわれた場合、そのお金を元手に商売や投資をすることができ、お金を増やせるかもしれません。そうなると1億円を返済しても利益が手元に残りますよね。もうおわかりかと思いますが、お金を借りられる期間が長ければ長いほど、私たちが得られる経済的なメリットは大きくなるのです。

 日本で住宅ローンが始まったのは明治時代で、当時は「5~15年で返済」という条件だったといわれています。その後、少しずつユーザーにとって住宅ローンは使い勝手がよくなり、今は基本的に35年、銀行によっては50年まで借りることができます。

 これだけの長期間、しかも低金利で多額のお金を借りられるわけですから、日本人の特権といっても過言ではありません。とくにサラリーマンや公務員および士業の方は収入が安定していることから銀行からの信用が高く、住宅ローン審査を比較的簡単にクリアできます。つまり、その特権をいつでも使える立場にあるのです。

 これだけ有利な条件でお金を借りられる制度は、世界的にみても、日本の住宅ローンをおいて他にはありません。住宅ローンは日本人の真面目な国民性によって実現できているお得な金融インフラであり、日本に住む人がフル活用しない手はないのです。

 住宅ローンに対するネガティブなイメージは今すぐ捨ててください。そして、次のように考え方をアップデートしておきましょう。

「住宅ローンは、お金がない人がやむを得ず使うもの」
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「住宅ローンは、現代の日本人に与えられた最強の武器」

 このように考え方を変えると、「頭金をたくさん入れて住宅ローンをできるだけ少なく借りよう」とか、「繰上返済して早く完済しよう」といった行動がバカらしくなってきますし、余裕資金を投資に向けるのが最も合理的だと気づくはずです。

 これからの時代は、「お得に住宅ローンを借りて、家計の余裕を作る」ことがもっともシンプルなお金の戦略になります。さらには家計の余裕で生まれたお金を投資すれば、ますます豊かになれますよ!

 最後に、それでもなお「でも、不動産価格が下落するリスクもあるし」「金利上昇は怖い」「延滞して自己破産したらどうしよう」などと不安に思っている人がいるかもしれません。金融の世界は必ずリスクとリターンは表裏一体です。リスクが怖いお気持ちはわかりますが、リスクを取らないとリターンを得られないのも事実です。

 ですので、「自分はどこまでリスクを取れるのかな? そのうえで、リターンをうまく取りにいく方法は何かな?」を一緒に考えていきませんか? きっと視界が開けると思いますよ。