千代田化工建設の決算を延期させた米ゴールデンパスLNGプロジェクト千代田化工建設の決算を延期させた米ゴールデンパスLNGプロジェクト(Golden Pass LNG ニュースリリースより)

プラントエンジニアリング大手で三菱商事の連結子会社である千代田化工建設が発表した2024年3月期の純損益は当初予想の黒字から一転赤字となった。主因は、米国で受注した100億ドル(約1兆6000億円)を超える超大型LNGプロジェクトのパートナーである米建設会社の破綻だ。千代田化工は1カ月間の決算延期にも迫られた。ただ、今回の出来事は個別企業で生じた大型プロジェクトのトラブルではない。実は、世界の今後のLNGプロジェクトにも及ぼしかねない巨大な「リスク」が露呈したものといえるのだ。今後の世界の大型LNGプロジェクトを示したリストを基に、巨大リスクの正体について解説する。(エンジニアリングビジネス編集長 宗 敦司)

千代田化工は158億円の赤字に転落
自己資本比率は1.1%の水準に

 千代田化工建設は6月下旬、米東海岸で建設予定のゴールデンパスLNGプロジェクトの問題で発表を延期していた2024年3月期決算をようやく公表した。問題となったプロジェクトで、ジョイントベンチャー(JV)パートナーで米建設会社のザクリーが米破産法11章(チャプター11)を申請し、プロジェクトから撤退することになった。

 千代田化工は24年3月期に、ザクリーが担当していた工事をJVとして引き継ぐ追加費用として370億円の引当金を計上した。これによって同社の最終損益は、180億円の黒字予想から一転、158億円の赤字(前年度は151億円の黒字)となった。23年3月期に222億円だった自己資本は24年3月期に49億円に減少。自己資本比率は1.1%まで低下した。

 ただ、債務超過というような事態ではなく、「現預金は1020億円あり、業務運営に支障はない。(親会社である)三菱商事からの新たな支援も考えていない」(太田光治社長)という。さらに、引当金の370億円についても今後の契約や顧客側との話し合いで、「取り戻すつもりで交渉をしていく」(同)としている。つまり、今回の赤字の影響は限定的である。

 実は今回の問題は単に個別企業が直面した大型プロジェクトのトラブルと捉えると問題の本質を見誤る。今回露呈したのは、脱炭素時代のトランジッションエネルギーとして世界で需要の増大とそれに伴う開発が加速する世界のLNGマーケットが抱えるリスクが膨れ上がっているということだ。次ページでは、そのリスクの正体について、今後世界で入札される世界11カ国20件にも及ぶ大型LNGプラント商談の進捗リストを基に解説していく。