世界的な脱炭素の流れを受けて水素が注目されるよりも前に、コツコツと水素事業に取り組んできた自治体が川崎市と神戸市だ。特集『1100兆円の水素バブル』(全8回)の#7では、大企業を擁する両市の水素を通じた町おこしの狙いを解き明かす。(ダイヤモンド編集部 堀内 亮)
水素で「グレーからブルーへ」
町のイメージを変えたい川崎市
今でこそタワーマンションが林立する武蔵小杉エリアが有名だが、神奈川・川崎市は、高度経済成長期に石油化学コンビナートを形成した京浜工業地帯のど真ん中に位置する工業都市である。
石油元売り最大手のENEOSや重電メーカーの東芝、化学メーカーの旭化成など50を超える企業の工場が約80カ所も立地しており、川崎市による都市イメージ調査では「産業が盛ん」とのポジティブなイメージがある。その一方で、「水や空気が汚れている」というネガティブなイメージも定着してしまっている。
水素で「グレー」という町のイメージを「ブルー」に変えたい――。
脱炭素社会の潮流を受けた水素バブルが沸くよりはるか前の2015年、川崎市は「川崎水素戦略」を策定した。無論、町のイメージを変えることが本旨ではない。水素戦略を策定した背景には、川崎市が抱える深刻な課題があった。