総合商社は、投資家から、化石燃料ビジネスから脱炭素ビジネスへの転換を求められている。だが、利益率が高いのは前者であるため、商社には葛藤がある。その葛藤を象徴するのが、三菱商事が利益の3~4割を稼ぎ出す製鉄用石炭(原料炭)だ。同社が“優等生”的に、原料炭2鉱山を売却した一方で、スイスの資源商社グレンコアは脱炭素時代の「座礁資産」といわれる石炭を買いあさり、巨利を得ているのだ。グレンコアの猛追に対し、三菱商事はどんな手を打つのか。特集『戦時の商社』(全16回)の#5では、「資源商社」三菱商事の本流事業の課題に迫った。(ダイヤモンド編集部 金山隆一)
三菱商事の稼ぎ頭に黄信号
スイスの資源商社が猛追
三菱商事の利益の3~4割を稼ぎ出す製鉄用石炭(原料炭)の世界市場で異変が起きている。強粘結炭と呼ばれる高品位の原料炭の市場で、これまで三菱商事と豪州の資源大手BHPが折半出資するBMA(BHP三菱アライアンス)が世界シェアで首位だったが、スイスの資源商社グレンコアが猛烈な追い上げを見せているのだ。
グレンコアはこの10年、石炭鉱山を買い続けた結果、2022年には石炭価格の高騰で3兆円近い利益を上げた。
他方、三菱商事は水素・アンモニアなど脱炭素ビジネスを強化しているが、収益化には至っていない。資源ビジネスの最前線で起きている異変に、三菱商事はどんな手を打っていくのか?
次ページでは、原料炭ビジネスを巡る三菱商事とグレンコアの戦略の違いを分析するとともに、戦時に価格が高騰する石炭のビジネスの未来を探った。