宗 敦司
プラントエンジニアリング大手で三菱商事の連結子会社である千代田化工建設は昨年、米国の大型液化天然ガス(LNG)プロジェクトでの共同企業体(JV)のパートナー企業の破綻によって赤字に追い込まれた。千代田化工は5月に公表した2027年度までの3カ年の中期経営計画で、海外の大型EPC(設計・調達・建設)への依存を減らす方針を掲げた。太田光治社長CEO兼CSOを直撃し、脱・EPCの考え方や今後の成長戦略を聞いた。米国では日米関税交渉で注目が集まったアラスカなどのLNGプロジェクトの建設ラッシュが迫っているが、太田氏は「大規模LNGの一括請負はもうやらない」と断言した。

「脱炭素の切り札」として日本が推し進めてきた洋上風力発電が、今まさに制度崩壊の危機に瀕している。発端は、政府公募のコンペ第1弾で計3プロジェクトを価格破壊で「総取り」した三菱商事の計画見直し。インフレなどを背景に計画の採算性が覆されたのだ。三菱商事の“救済”に向け政府はルール変更の検討を進めているが、「後出し」のルール改定は洋上風力ビジネスを根底から崩しかねない。さらに、日本の洋上風力市場を消滅させかねない深刻な問題も表面化してきている。

日米間の関税交渉で、日本の造船技術支援を交渉材料に、米国の関税措置の見直しを促す「造船カード」が注目を集めている。米国のトランプ政権は、造船業を復興しようとしている。石破政権は、日系造船メーカーなどに、米国の造船企業に投資させるなどして、自動車関税を下げさせるための取引材料とする検討を進めているようだ。しかし日本の造船業は韓国や中国に市場を奪われ、造船能力は縮小している。一方、米トランプ大統領は、同国からの輸出に使用する船舶の多くを米国製とすることを義務付ける新規制を打ち出し、LNG(液化天然ガス)輸出事業者は米国で建造したLNG輸送船を一定の割合、使用しなければならないと発表した。これに即応したのが韓国造船業で、早くも米国でのLNG船建造の意思表明をしている。造船大国となった韓国の前のめりの姿勢に、日本の「造船カード」は太刀打ちできるのか。

プラント大手の日揮ホールディングス(HD)が2025年3月期の業績予想を大幅に下方修正した。昨期から続く海外EPC(設計・調達・建設)プロジェクトでの混乱と追加費用の発生が主因。昨期に続く下方修正となり、2期連続の最終赤字に陥る見込み。経営責任を明確にするため、EPCを統括していた石塚忠社長最高執行責任者(COO)が辞任し、佐藤雅之会長最高経営責任者(CEO)が社長を兼務する異例人事も発表した。昨期から混乱に陥っていたEPCの改革を進めてきた石塚氏が事実上の引責辞任する事態となったが、日揮HDはうみを出し切ったといえるのか。新たなLNGプロジェクトの受注動向なども含めた今後の展望を探った。

米トランプ大統領は就任直後の大統領令で「国家エネルギー非常事態」を宣言。昨年1月にバイデン前大統領が行った新規LNG(液化天然ガス)プロジェクト認可停止を撤廃した。これにより、今後米国でのLNG開発には足かせがなくなり、米国での新規プロジェクトが進展する。折しも、欧州では脱炭素化に向けた水素やアンモニアなどの代替燃料計画が想定よりも遅れ、海運業もLNG燃料船の導入を計画。一方でアジアでは石炭火力代替としてのLNG火力へのシフトを進めているなど、世界的にLNG需要が拡大傾向にある。それに伴ってLNGプラントや受け入れ設備の計画が増加し、日揮ホールディングスは昨年に続き今年も海外LNGプロジェクトの受注を予定している。ただ、LNGプロジェクトも脱炭素化で変質を続けており、計画が増加したとしても、日本が誇っていたLNGプロジェクトの優位性が必ずしも担保されるというわけではなさそうだ。

今、地熱発電が再び注目されている。再生可能エネルギーの中でも出力変動の少ない、限られた電源の一つで、今後生成AI(人工知能)普及に伴い急増するデータセンター向けCO2カーボンフリー電源としての役割も期待される。実は日本の地熱資源量は世界3位。しかも、日本の重電3社では世界シェア6割を握る。しかし地熱発電は開発リスクが他の再エネに比べて高く、政府の導入目標の実現は絶望的だ。地熱発電の開発が抱えるリスクや開発が進む革新的な技術を解説。政府が開発促進へ打った“奥の手”も明らかにする。

2024年3月期に複数案件の採算悪化から損失引当金を計上し、赤字となった日揮ホールディングスと、米LNGプロジェクトのJVパートナーの破産法申請で決算時期を大幅に遅らせたうえに赤字決算となった千代田化工建設。エンジニアリング大手2社の上半期の業績は、順調に推移している。ただ、そこに影を落としているのが、脱炭素化投資の増加と、コスト増に追いつけない顧客の認識のズレによる「投資決定の遅れ」がある。両社が収益の柱とする大型LNGプロジェクトの中で投資決定の遅れが懸念される案件をリストアップ。リスクの本質についても解説する。

米グーグルが、脱炭素電源として次世代原発に触手を伸ばし始めた。小型モジュール原子炉(SMR)技術の開発を進める米企業と契約を交わしたのだ。AI(人工知能)の普及で大幅な増強が求められるデータセンターは、今後電力需要を爆発的に押し上げると予測されており、その電源としてSMRが急浮上している。米アマゾン・ドット・コムも開発を進める企業の資金調達に協力を決めたほか、日本では東芝や三菱重工業が独自に開発を進めている。小型で安全で経済的といわれるSMRについては、ロシアや中国が商用段階に入ったほか、韓国、英仏カナダの有力企業も国を挙げて開発に乗り出している。しかし、そこには二つの大きな落とし穴がある。

プラントエンジニアリング大手で三菱商事の連結子会社である千代田化工建設が発表した2024年3月期の純損益は当初予想の黒字から一転赤字となった。主因は、米国で受注した100億ドル(約1兆6000億円)を超える超大型LNGプロジェクトのパートナーである米建設会社の破綻だ。千代田化工は1カ月間の決算延期にも迫られた。ただ、今回の出来事は個別企業で生じた単なる大型プロジェクトのトラブルではない。実は、世界の今後のLNGプロジェクトにも及ぼしかねない巨大な「リスク」が露呈したものといえるのだ。今後の世界の大型LNGプロジェクトを示したリストを基に、巨大リスクの正体について解説する。

プラントエンジニアリング国内最大手、日揮HD(ホールディングス)の2024年3月期の連結最終損益は赤字に沈んだ。既に第3四半期までに国内外の案件で採算悪化を見込んでいたが、サウジアラビアの大型案件の不採算も発覚し、黒字の見込みから一転、78億円の赤字となった。ここ数年、海外の大型案件などで順調な業績を残し、脱炭素関連プロジェクトなど新規領域にも積極的に展開していた同社に何が起きているのか。
