「芸能人と一緒にモノ作りをしてこそ自分」異動でうつ病になった50代男性に本当に必要なものPhoto:PIXTA

独身を通してきた人をはじめ、配偶者と死別・離別した人など、世の中にはさまざまな事情で「おひとりさま」として暮らす人がいます。しかし一口におひとりさまと言っても、年齢を重ねた後も幸せに生きていける人と、不安やストレスにさいなまれながら生きていく人に分かれるのが現実です。両者を分ける「壁」の正体は何なのでしょうか。生前整理・遺品整理のプロ、山村秀炯(やまむら・しゅうけい)氏の書籍『老後ひとり暮らしの壁』から抜粋して、その答えをお届けします。今回のテーマは「居場所」について。

居場所を失ったおひとりさまが抱える深刻な問題

 都内でメンタルクリニックを経営する精神科医・江越正敏先生のもとを、佐々木さん(仮名)という50代男性が訪れました。腰痛と気分の低下に悩まされているといいます。

 芸能関係の雑誌編集者としてバリバリ働く、いわゆる独身貴族。未婚ですが、いつも年下の彼女を連れて歩いていました。

 しかし、あるとき突然、総務部へ異動になってしまいます。それから腰痛が悪化して布団から起き上がることもできなくなり、休職せざるを得なくなりました。

 佐々木さんの問題は、自分の居場所を失ってしまったことです。佐々木さんはクリエイティブな仕事が大好きで、誇りをもって働いていました。ところが総務部に異動になり、相当にショックだったようです。彼は異動を「左遷された」と感じていました。その結果、うつ病を発症してしまったのです。しかし、本人はそれを認めていませんから、腰痛というかたちで身体症状として現れていたのです。

 佐々木さんが興味深いのは、常に若い彼女をサポート役として連れ歩いていても十分に所属欲求を満たせていないこと。それまであった居場所が奪われた喪失の痛みは、それだけ強いものなのでしょう。

緩やかに自分らしさを変化させていく

 さて、この状態から抜け出すには、どうすればいいのでしょうか?