物価高のため多くの企業が値上げに踏み切る昨今、「値上げしない」宣言で注目を集めた企業がある。外食チェーンのサイゼリヤだ。原材料の高騰や円安といった環境は同じ中、なぜ同社は値上げナシの姿勢を貫けるのだろうか。その理由を決算書から読み解いてみよう。(ファインディールズ代表取締役 村上茂久)
ミラノ風ドリアは300円!
値上げなしでも売上高は過去最高に
円安も相まって、日々の生活で物価の上昇を感じる機会が多くなってきたのではないでしょうか。
実際のところ、インフレ率は消費者物価指数の「生鮮食品を除く総合(コア CPI)」で見ると、2024年3月時点で前年比+2.6%となっています。バブル崩壊後、長らくデフレに苦しんでいた日本経済ですが、最近ではインフレによって家計の予算繰りが厳しくなってきているといえます。
このように物価が上昇する中、「値上げしない」宣言で昨年注目を集めた会社があります。サイゼリヤです。
看板メニューの「ミラノ風ドリア」は、300円。1999年には、それまで480円だった価格を一気に290円まで値下げしました。その後、2020年7月に現在の価格になってからは、物価高が続く中でも「値上げなし」を貫いています。
他の外食企業は軒並み値上げしている中、サイゼリヤの業績はどうなっているのでしょうか。普通に考えると、円安や原材料価格の高騰もある中、「値上げがないとさすがに厳しいのでは」と脳裏によぎります。
以下の図は、サイゼリヤの過去5年分の売上高と営業利益、そして、24年10月期の業績予想をまとめたものです。
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この図から分かるように、実はサイゼリヤの業績は好調で、23年8月期において過去最高の売上高を誇っています。また、24年8月期の予想では、さらに最高記録を伸ばしそうです。それだけではありません。
コロナ禍に営業赤字に転落したものの、直近の23年8月期では黒字になるとともに、24年8月期には過去最高クラスの営業利益を見込んでいます。
なぜ、原材料の高騰もあり、値上げもしない中、サイゼリヤは売上高と営業利益ともに好調なのでしょうか。今回は、その謎について考察していきます。