「100%の自分」にチャンスは降りてくる
岩瀬 派遣先はどちらだったんですか?
杉村 それが通信会社や外資系証券会社などが入るオフィスビルだったんです。
岩瀬 もしや、杉村さんが以前お勤めだった証券会社が入っているビルですか?
杉村 そうなんです。たまたまそこから僕のキャリアは始まったんです。当時、ビルのフロアーごとに清掃員が充てられて、僕はちょうど外資系証券会社の入っている18階から22階でした。ビルに入っている企業ごとに始業時間が異なるので、彼らの始業時間の1時間前に仕事をスタートするのです。例えば通信会社が入っているビルは8時半スタートなので7時半という具合に。でも僕の配属されたフロアーは外資の証券会社が入っている。彼らは6時半には出社しているので、僕の仕事のスタートは5時半でした。
岩瀬 5時半! 体育会系だからそのあたりは苦労しなかったのでしょうね。
杉村 僕だけ若かったので、朝早いフロアに配属されたのかもしれませんが、やるしかないなと。もうとにかく、毎朝ピカピカに床もトイレも磨いていました。
岩瀬 目の前の仕事をとにかく全力でやるというのは、新入社員がチャンスをつかむ基本中の基本ですね。
杉村 当時、金融とか証券とかまったく興味がなかったのですが、皆高そうなスーツを着ているわけです。あと、毎日会社のロゴをピカピカに磨くわけですよ。そうやって磨き上げていくうちに、自然と「この会社ってどういう会社なんだろ?」という興味がわいてきました。
岩瀬 まさに毎日看板を磨いていく中で、愛社精神も磨かれていったのですね。
杉村 そうやって懸命に掃除をしていたら、外資系だからでしょうか、証券会社の外国人幹部が気軽に話しかけてくるようになったんです。当時僕は「社長」とその人に呼ばれていて、「ヘイ社長!」なんて言われて。僕もその幹部を「会長」とお呼びでして、「舐めても大丈夫なくらいピカピカに磨き上げました!」とかペーパータオルを取って「会長どうぞ」なんて渡したりして、軽いコミュニケーションをとっていました。
そんなことをしていたら、あるときその人に言われたんです。「なんで君のような若い男が、ここで働いている(掃除の仕事をしている)のか?」と。