チャンスをつかみ、セキュリティの向こう側へ
岩瀬 たしかに、働き盛りの元気な若者が早朝に清掃とは気になるかもしれませんね。
杉村 僕以外はおじさんおばさんでしたからね。で、ここまでの経緯を話したら、「来週うちの会社の試験を受けないか」と。
岩瀬 いきなりですか!
杉村 いきなりです。試験は1週間後だと言われました。外資系なので幹部クラスになると、自分の裁量でスタッフを雇えるんですよね。当時は金融緩和で証券会社も人手不足。とにかく働ける人を急ぎ集めたかった。そのタイミングにうまく合ったのだと思います。こんなチャンス二度とないと、猛勉強しました。
岩瀬 若くて元気で朝も強くて仕事も全力。そんな姿が目に留まったんですね。それで外資系証券会社に入ったのですか。
杉村 そうなんです。清掃会社の仲間たちは、僕が無事就職が決まったと送別会まで開いてくれました。
岩瀬 若き青年の未来に、仲間たちも喜んでくれたんですね。しかも外資系証券会社とは、シンデラ・ストーリーです。
杉村 実は、どこに就職が決まったのかはみんなには言っていなかった。言えなかったんです。
なので、送別会の翌朝、いつものビルにスーツ姿で僕が現れたので、「ちゃんと会社に行かないと」なんて心配されて。そこで「実は僕、ここに就職が決まったんです」と明かしました。
それまでセキュリティ上入れなかったエリアに、入れるようになった。向こう側の世界に自分が足を踏み入れる日が来るなんて、思いもしませんでした。