老後5000万円問題がやってくるワケ
(2)インフレで資産が目減りする……!

 2点目のインフレについてです。物価が上昇すれば、資産の実質的な価値が下がります。

 例えば、年間のインフレ率が2%であれば、10年後には現在の資産の実質的な価値が81.7%にまで減少します。20年だと66.8%です。これは、現金を保有しているだけでは資産が目減りすることを意味します。

 政府のインフレ目標が2%ですから、マイナス2%ずつ減っていくことを前提とすると、65歳時点で6000万円の現金を持っていた場合、75歳では4902万円まで実質的な価値は目減りします。85歳では4006万円です。65歳以降は取り崩す金額があることを加味すると、もっと小さな金額になるでしょう。

 なお、貯蓄を取り崩す金額(支出―受け取る年金)を年200万円として、インフレ率2%、65歳時の平均余命20年で考えると、65歳時点で貯蓄5000万円の場合、85歳でほぼ底をつく計算になります。女性の場合、90歳まで長生きできるので資産がマイナスになってしまいます。

 このように単純に貯蓄するということを仮定すると、老後資金は5000万円あっても十分とはいえないかもしれないのです。

 ただ、いたずらに不安をあおるつもりはありません。これはあくまで現金で資産を持ち続けた場合です。適切な資産運用ができれば、また結果は変わってきます。

 重要なのは、計画的に資産形成を行っておくことです。さまざまな金融機関や金融庁がシミュレーターをウェブサイト上に掲載しています。そうしたシミュレーターも活用しながら、生活にかかるお金や将来のために積み立てておくお金について検討してみてはいかがでしょうか。

※参考
遺言相続.comシミュレーター
https://egonsouzoku.com/simulator02/