ビールを飲む男性写真はイメージです Photo:PIXTA

糖尿病が心配な中高年にとって最も気がかりな血糖値。自己流の低糖質ダイエットでリバウンドを繰り返さないためにも、健診結果で押さえるべき大事なポイントがあるという。まずは「糖質」の意味を正しく理解しよう。本稿は、永田 宏『健診結果の読み方』(講談社)の一部を抜粋・編集したものです。

中高年が最も気になる「空腹時血糖値」
40歳でハードルが上がるカラクリとは

 糖尿病が心配な中高年にとって、血糖値は最も気がかりな健診項目のひとつです。職場健診では、必須項目となっています。

 血糖値は血液中のブドウ糖濃度のことです。単位は「mg(ミリグラム)/dL(デシリットル)」。血液100cc当たりに溶けているブドウ糖の量(重さ)になります。

 血糖値は食事をすれば増えますし、空腹になれば下がります。変動幅が大きいため、健診では、食事から10~12時間経過後に血糖値を測定するようにしています。

 採血の前日は、夜9時までに食事を済ませるように言われるのは、そういう理由からです。完全に空腹になった時点で測定するので、「空腹時血糖値」と呼ばれているのです。

 基準範囲は70~109。100~109は「正常高値」と呼んで、糖尿病予備群が含まれているとしています。

 また110~125までは境界領域、126以上になると糖尿病の疑いが強くなります。逆に69以下なら、低血糖と言われます。

 特定健診の基準はこれよりも一段厳しく、基準値は100未満となっています。職場健診も同様ですから、40歳になると基準が変わります。その結果、次のような問題が生じてきます。

 去年39歳だったひと(仮に鈴木さんとでもしておきましょう)の、去年の空腹時血糖値が105だったとします。その時点では鈴木さんの血糖値は正常値です。そんな鈴木さんは、今年40歳になりました。

 この1年間、それなりに摂生して暮らしてきたおかげで、今年の血糖値も105でした。

 でもそれではダメなんです。鈴木さんにはイエローカード(保健指導の勧告)が渡されてしまいます。

 まあ、実際にそこまで厳しくやっている会社はほとんどないでしょう。それに保健指導の制度そのものが形骸化してしまって、真面目に受けるひとが減っています。

1980年までは「140」未満なら
糖尿病扱いされていなかった

 そもそも以前は血糖値の基準値は、もっと緩いものでした。1980年に世界保健機関(WHO)とアメリカ糖尿病学会が決めた基準では、140以上を糖尿病(疑いを含む)とするというもので、日本でも同じ基準が採用されていました。